はじめに

リファラル採用は注目を集めている採用手法ですが、なんでも都合よく解決できる魔法の杖ではありません。

実際に自分の会社でリファラル採用に力を入れるべきか否かということは、経営や採用に携わる方々はよく吟味をしていることでしょう。

具体的には「採用コストがどれくらい下がるか」「採用人数をどれくらい増やせるか」「年間の採用シミュレーションはどうなるか」といったことを考えると思います。

実際、経営として意思決定をする際にはこれらは無視できない要素になるので、考えることに価値はあります。

しかし、リファラル採用は採用手法の一つでありながら、「いますぐどれだけ採用できるか」という目先の結果だけを求めて取り組むものではありません。

リファラル採用の本質というものは、長期的に採用の歯車を稼働させ、未来の採用に対して備えることにあります。

ある2つの会社の採用の行く末

想像してみてください。
今、私達の目の前には2つの会社(A社とB社)があります。

現在

A社はリファラル採用に力を入れることに決めました。

まず、インセンティブを設計して会食費補助の制度を作って社員に告知しました。
とはいえ、いきなり紹介をしてくれと言われても、友人に会社の魅力を語ったり会社に友人を紹介した経験なんてありません。
周りで転職活動している友人を把握しているわけでもないので、紹介数も伸びません。

しかし、社員に向けて定期的に呼びかけながら、どうしたらもっとリファラル採用がうまくいくようになるか、時には現場に意見を求めながら試行錯誤していきます。

一方でB社はリファラル採用には力を入れないことに決めました。

なぜなら、かつてリファラル採用にトライしてみたことがありましたが、紹介の実績が上がらなかったからです。
そもそも人事部にも社員にも負荷がかかるということもあり、成果につながらないのであればやらない、という意思決定になりました。

制度はいちおう作ったほうが良いだろうということでインセンティブを設計して会食費補助の制度も作りましたが、利用する社員は出てきません。

それも仕方のないことなので、これまで通り媒体やエージェントを通しての採用活動を続けていきます。

2年後

A社はリファラル採用を頑張っていますが、まだ目に見える成果は上がっていません。
最初はゼロだった紹介が、年に数名上がってくる程度になったくらいです。

このままではうまくいかないのではと危機感を抱き、現場や新卒に対して協力してくれる人を募り、プロジェクトチームを発足しました。

チームのメンバーが中心になってリファラル採用について呼びかけをしたり、現場目線の企画を立案・実行してもらうことを期待してのことです。

また「経営判断としてリファラル採用を大事にしている」ということを改めて認識してもらうために、社長から社員に対してリファラル採用の重要性を訴えるということを定期的に行いました。

B社は社員紹介は一切上がってきませんが、これは予定通りなので特に問題はありません。

媒体やエージェントでの母集団形成は変わらずできており、安定した採用活動を続けています。
リファラル採用について他の会社の取り組みを聞くこともありますが、「うちには合わない採用手法だから」と考えています。

5年後

A社では徐々にリファラル採用が社内に定着してきました。

人事や社長が定期的に呼びかける以外にも、現場から募ったプロジェクトチームがよく発信をしてくれるようになりました。

プロジェクトチームは、社員が友人を紹介してくれて入社にまで至ったケース、それ以外にも工夫して友人への呼びかけをしているケースを取り上げてコンテンツ化し、社内にメール配信をするなどして関心が集まるように腐心しています。

社員に飽きられないような内容を考えるのは大変ですが、おかげで一定の読者がついてファンになってくれたり、プロジェクトチームに入りたいと言ってくれる人も増えてきました。

実績が出てきたことで社長が社外でリファラル採用について発信することも多くなり、A社の広報活動にも良い影響を与え始めています。

B社は今も媒体とエージェントでの採用を行っています。

ただ、採用チームは違和感を覚えています。
徐々に、昔に比べて優秀な人が取りづらくなってきているのでは、と感じるのです。
でも理由はわかりません。

とにかく会社の成長のためには優秀な人材の採用が欠かせませんので、エージェントとの関係性を深めるためにコミュニケーションを増やしたり、採用フィーを上げる等の工夫をしています。

その甲斐もあって採用目標をクリアすることができ、ホッと胸を撫で下ろしています。

そして10年後…

A社では、友人に会社のことを話したり、転職を考えている友人がいたら会社に紹介する文化が根付いていました。
その結果、リファラルで入社してくれる人たちの数が徐々に積み上がってきました。

なぜ入社してくれる人が増えてきたのか。
それは、A社を好きな人が増えたからです。

A社を紹介された人たちは、そのときに入社することがなくても会社や社員に魅力を感じ、また人と真摯に向き合う姿勢に良いイメージを持ち、転職を検討する時期になるとA社のことを連想するようになりました。

またA社のリファラル採用の取り組みは外部メディアに取り上げられることもあり、A社が新しい取り組みを行う面白い企業だというイメージが広がりました。

一方のB社は、採用に行き詰まっていました。

5年前に感じた違和感は正しく、優秀な人材に会える機会が目に見えて減ってきています。
また、退職をしてしまう社員が増えてきました。
退職者が増えればその分だけ採用をしなければならなくなり、ジリ貧に陥っています。

昔に比べても働く環境は大きく変わっていないはずなのに、なぜ。

そんな疑問を抱いていたら、ちょうど退職する社員との面談の時間がやってきました。

純粋な疑問から「どうして今回転職を決めたのか」と聞いてみました。
すると、意外な答えが返ってきました。
「友人に紹介されて、転職することにしました」

実はこの社員は数年前からA社にいる友人に声をかけられつつも、そのときは転職を考えていませんでした。

ただ自分の年齡と今後の仕事内容を考えたとき、転職がふと頭をよぎります。そのタイミングでまた友人から声をかけられたため興味を持って話をし、そしてついに転職を決意した、ということでした。

終わりに

いかがでしょうか。

限定的なシチュエーションでのお話ではありますが、これは完全にフィクションというわけではありません。

既に進行しているお話です。

今は幸か不幸か、日本でリファラル採用に力を入れて大きな成功を収めている企業は、そう多くはありません。

ただリファラル採用に真摯に向き合い始めている企業は確実に増えてきています。

リファラル採用は社員の声を聞きながら自社の魅力を高め打ち出していかなければならないので取り組みとしては難しいですし、成功するまで時間がかかってしまうことも多いのは確かです。

でも、手をこまねいている間に、同業他社の競合はリファラル採用のための施策を考えています。
そしてライバルが目に見える成果を出し始めた頃には、既に彼我の差は計り知れないものになっているかもしれません。

ビジネスなので目の前の成果を追求していくことは当然の姿勢ですが、リファラル採用というものに対しては、他の採用手法に比べて長期的な視野を持って、どのように解釈すべきか、一度立ち止まって考えてみても良いのではないでしょうか。

【参考】
今回の記事を書くに当たり、下記2つの記事を参考にさせていただきました。
勝手ながら引用させていただきます。
良いインサイトを与えていただき、大変感謝しております。

人材業界トップカウンセラーが、リファラル採用に完敗した話(株式会社Potentialight 代表取締役 山根 一城様)

リファラル採用「はじめの一歩」(株式会社メルカリ 石黒 卓弥様)

上野 賢司
株式会社リフカム カスタマーサクセス部 コンサルタント
HRTechの会社でのコンサルタントを経て、株式会社リフカムに入社。前職では運用サポートの立ち上げを行い、100社以上でのコンサルティングを実施。ダイレクトリクルーティングの普及に務めた。
リフカム入社後はコンサルティングの経験を活かし、リファラル採用を成功する企業が増えることによって「採用とは仲間集め」と実感できる社会の実現を目指している。

記事についてもっと詳しく知りたい、自社の課題にあった事例を知りたい、コンサルタントに具体的な採用のお悩み相談をしたい方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

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