株式会社LIFULL 執行役員Chief People Officer 羽田幸広 様

株式会社LIFULLについて
1997年設立。従業員数1245名(2017年12月現在)
”常に革進することで、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る”を経営理念とし、総掲載物件数No.1の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S(ライフル ホームズ)」をはじめ、花の定期便サービス「LIFULL FLOWER」など多角的にサービスを提供。
参照URL:https://lifull.com/

社員一人ひとりにビジョンを浸透させるために

LIFULLには「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートビジョンがあります。世界中の全ての人の人生や暮らし(=LIFE)に寄り添い、それらを満たす(=FULLにする)サービスを展開するという私たちの経営理念を表現しています。LIFULLが展開する事業はすべてこの経営理念やコーポレートビジョンに沿っていなければいけないですし、当社で働く人はこの考えに共感してともに実現してくれる同志であってほしいと考えています。

そのためには、社員一人ひとりにこの経営理念や価値観が浸透していなければいけません。それを実現するために、LIFULLには社是や経営理念、ガイドラインを記した「ビジョンカード」があります。このカードは2005年、会社が設立されて8年目の頃に誕生したものです。私が入社する2ヶ月ほど前に、全社員が話し合ってこのカードが生まれました。

この時期は徐々に社員が増え、30~40名ほどの規模の会社でした。それくらいの大きさになると様々な価値観の人が入社してくるので、それまでは言葉にしなくても伝わっていた価値観や方向性、今後の方針などがブレ始めていました。そこで、それらをしっかりと文字に落とし込んでブレないようにしようということになったのです。

ビジョンカードを作るにあたっては、社長が原案を作り、それに対して社員からの意見を募りました。最終的には役員が議論し、それを社員が陪席して意見を述べるという場を作ったので、作成にはトータルで3ヶ月ほどかかりました。

このようなプロセスを経たためにビジョンカードを作るのには時間がかかりましたが、社長は社員全員で内容を決めることにこだわりました。会社から与えられたものよりも、自分たちで作ったもののほうが思い入れの強いものになりますし、会社の方向性や価値観をスピーディーに浸透できると考えたからです。

大きな「方向」を決め、社員に自由に活動してもらう

経営理念や価値観は、最初から仰々しいものを作らなくてよいと思います。でも、標語というか、こういうものを目指そうというものは最初からあってもよいと思います。

個人的にも、『これをやりたいからこういうチームを作る』という順序が好きです。つまり、目標が最初にあり、それに共感した人が集まってチームになる。甲子園を目指す球児のような感じですね。「どんな分野でもいいから日本一になる!」ではなくて、どの分野でどういった勝ち方をしたいのかを明確にする。その方が人材も集めやすくなるのではないかと考えています。

理念などで会社の方向性が決まったら、それに共感し、実現したいと考える人を採用し、社員に自由に活動してもらう。
社員に自由に活動してもらう際のキーワードが「内発的動機付け」です。

一貫性のある風土、制度を作れた理由

当社の組織作りのポリシーで最も重視しているのが「内発的動機付け」で、採用、組織デザイン、事業開発、人材育成、制度作りまで、すべてにおいて内発的動機付けに基づいて設計されているかを常に意識しています。

内発的動機付けというのは、自分の内側から湧き上がる「これをやりたい、こうなりたい」という欲求のことです。この欲求に対して挑戦の機会を提供するというのが基本的な考え方になります。

といっても、社長には当社創業前にマネジメント経験はなかったですし、私も人事の経験がありませんでしたので、最初から確固とした価値観があったわけではありません。しかし、社長には「未経験でも、やりたいという情熱があれば、どんなこともできる」という信念がありました。なので、私が入社した頃には、「内発的動機付け」という言葉で表してはいませんでしたが、常に手を上げた人が任されるという文化がありました。

私自身も、人から言われたことをするのではなく自分で決めてやりたいというタイプなので、社長と私の価値観は一致していました。「やりたい!」という想いがある人のほうが力を発揮できるし、やりたいことなので自分で勝手に勉強して成長していくと信じ、挑戦する人がチャンスを得られる仕組みを作っていこうということで、現在のような組織や施策群になっています。

また、組織づくりに一貫性を持たせられた理由として、10年を超える組織づくりに一貫して社長や私が関わることができたということも大きいと思います。もし、複数の人がテクニカルに組織や制度をつくってしまうと、一貫したポリシーのない制度になってしまう可能性がありますが、社長や私が常に基本的な価値観とブレてないかを確認することができたので、一貫性を持たせることができました。

組織の価値観の浸透や個人の「持論」を育成することが大切

社長も私も誰かに命令されるのは嫌だよね、自発的にやりたいよね、というところは一貫しており、それが経営理念を実現するために重要な価値観だったため、おのずと組織の価値観になりました。

「企業文化とは、ボスがいなくなった後に起こること」と言いますが、組織の価値観が社員に浸透し、社員が自発的にそれに沿った行動がおこなわれると企業文化になっていくと考えています。

組織や人事関連について、ネットや書籍などで常にいろいろな情報がもたらされます。

例えば、最近では例えばティール組織が話題になっています。ティールというコンセプトを取り入れること自体は悪いことではありませんが、取り入れる前に、まずは自社の企業文化を明確にして、企業文化に良い影響を及ぼすことができ、ビジョンの実現に貢献するのであれば取り入れようと、考えるとより良い組織が作れるのではないでしょうか。

私も新しいコンセプトや人事施策などに関しては当然情報を集めていますし、よいものは取り入れたいと考えていますが、単純によいと言われたからといって飛びつくのは危険だと考えています。シミュレーションが難しいようであれば、テスト的に導入して様子をみるというのも手かもしれません。

また、個人の「持論」を育てていくことも重要だと思います。自分なりに仮説を立ててみて、実際に試し、うまくいった場合は持論にしていく。もし、うまくいかなかったときは再度仮説を立ててみる。さらには、組織やリーダーシップなどの分野で様々な研究が行われていますので、そういった「理論」と自分の持論と擦り合わせ、持論を確固たるものにしていくなどして持論を育てていくことが大事なんだろうなと思います。

リファラル採用も自分らしく

リファラル採用に関しても、企業文化と合致しているかを見極めて、合致しているので社員の方に自発的な紹介を促すという会社と、とにかく流行に乗ってリファラル採用をやりたい、やらせたいという会社ではのちのち差がついてくると思います。

リファラル採用のメリットは、採用活動の効率がよいですし、リファラル採用で入社した社員の離職率はおそらく低いでしょう。採用する側の社員も、会社のことを語るので、改めて会社を俯瞰してみたり、企業文化を言語化して話したり、日々の仕事と会社がやっていきたいことをひも付けて話すことで、エンゲージメントも高まりますし、採用コストも下がるので、よいことだらけだと思います。反対に、デメリットは人事以外の社員の工数が増えることですが、人員が十分にいれば、採用費も含めるとデメリットにならないように思います。

当社には15年くらいの歴史のある「仲間を増やしま賞」と「仲間を増やしま奨励金」というリファラル採用に関する制度があります。前者は紹介手当、後者は会食費用の負担です。ただ、当社はあまり積極的にリファラル採用を行っていません。社員には採用や育成、企業文化づくりなどでかなり手伝ってもらっていますので、社員が人事関連に割いてもらう時間を勘案し、リファラルについては毎月広報を行う程度であまり強くプッシュしていません。

このように、何を導入するかや何に力を入れるかは、成果が出るのであれば、自社の文化や状況を踏まえて自由に組み合わせていけばよいと考えています。

組織のビジョンやカルチャーにフィットした、社員自身が主体的になれる組織づくりの重要さを実感いたしました。
本日は大変貴重なお話をありがとうございました。