1. 早期離職者が出る理由と予想されるデメリット

早期離職を防ぐための適切な対応策を考えるには、早期離職者が出てしまう具体的な理由をきちんと把握しておく必要があります。

また、早期離職者が増えることで予想されるデメリットについても解説していきます。

1-1. 早期離職が出る理由

早期離職者が出てしまう理由をいくつか紹介します。早期離職者が多い場合には、このなかのどれか、もしくは複数の要因が当てはまっている可能性があります。

◆採用のミスマッチ

日本の多くの企業は「メンバーシップ型雇用」を採用しており、これは年功序列や終身雇用を前提とし、勤務地や職務を限定しません。企業が社員の意思に関係なく仕事を決められるため、新入社員の期待と現実のギャップが生じやすく、早期離職の一因となっています。

◆給与や福利厚生に対する不満

給与や福利厚生の不満も早期離職の要因です。業務内容に見合わない低賃金や不十分な福利厚生は、社員の将来不安を招き、より良い条件の職場を求めて退職する傾向があります。

◆不十分な人材育成環境

新入社員教育の不足も早期離職の原因となります。不十分な研修や日常的なフィードバックの欠如は、社員の不安感を高め、モチベーションを低下させます。成長や能力発揮の機会が限られていると感じると、社員は早期に退職を選択しがちです。

◆長い労働時間

長時間労働が常態化している職場は、早期離職のリスクが高くなります。繁忙期や人手不足による長時間労働は、社員の身体的・精神的負担を増大させます。メディアでブラック企業や過労死の報道が増えたことで、長時間労働に対する社会の目も厳しくなり、若い社員が早期に退職を検討する傾向があります。

1-2. 早期離職が多いことで予想される企業へのデメリット

早期離職が増えることで、企業へのさまざまなデメリットが予想されます。具体的にどのようなデメリットが発生するのか、詳しく解説していきます。

◆優秀な人材を失う

労働環境の悪さは、優秀な人材の早期離職を招きます。効率の悪い職場では、特に有能な社員が不満を感じやすく、改善の見込みがないと判断すると退職を選びます。優秀な人材ほど転職の機会も多いため、離職のハードルが低くなります。

◆経費が余計にかかる

早期離職は企業に大きな経済的損失をもたらします。採用と育成にかけたコストが無駄になるだけでなく、欠員補充のための新たな採用・育成コストが発生します。さらに、頻繁な人員変動は人事労務コストを増加させ、離職率が高まるほどこれらの負担は企業にとって深刻な問題となります。

◆社内の士気が下がる

早期離職の頻発はチームワークと業務効率に悪影響を及ぼします。頻繁な人員交代は仕事の連携を乱し、引き継ぎや新人教育に時間を取られ、実務の進行を遅らせます。これは全体の士気低下につながる恐れがあります。さらに、指導者側も新人教育への意欲を失い、それが更なる早期離職を招く悪循環を生む可能性があります。結果として、組織全体の生産性と雰囲気が悪化するリスクが高まります。

◆クライアントからの信用を失う

企業間取引は、多くの場合、個々の担当者間の信頼関係に基づいています。長年の取引が特定の社員への信用によって維持されていることも珍しくありません。そのため、信頼関係を構築した社員の早期離職は、取引自体の喪失につながる可能性があり、企業にとって重大な損失となります。これは、人材の継続性が企業の安定と成長に直結することを示しています。

2. 早期離職を食い止めるための施策

早期離職の理由と企業へのデメリットを踏まえ、それを防ぐための具体的な施策を考察します。これらの対策は、社員の満足度を高め、企業の安定と成長を促進することを目的としています。

2-1. 採用方法の改善

採用のミスマッチによる早期退職を防ぐには、採用方法の改善が重要です。従来の「待ち」の姿勢から、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用などの「攻め」の採用へ転換することで、企業の社風や業務内容に適した人材を効率的に確保できます。

また、内定後のフォローも重要です。内定者へのアンケート実施や、SNSを活用した内定者同士のコミュニティ形成など、入社へのモチベーション維持を図ります。これらの施策により、採用のミスマッチリスクを軽減し、新入社員の定着率向上が期待できます。

2-2. 教育制度の見直し

メンター制度やOJTの導入は早期離職防止に効果的です。OJTは実務を通じた研修方法で、メンター制度は職務外の面でも新入社員をサポートします。これらは少人数制で個別対応が可能な点が特徴です。

ただし、制度導入だけでは不十分です。定期的なチェックや上司からのフィードバックが重要で、これにより研修担当者の負担軽減と効果的な研修実施が可能になります。

研修の目的と目標を明確にし、成果を定期的に評価することで、より効果的な人材育成と早期離職防止が実現できます。これらの取り組みにより、新入社員の成長と職場への適応を促進し、離職リスクを軽減できます。

2-3. ユニークな人事制度の導入

早期離職防止のため、多くの企業が独自の人事制度を導入しています。これらは各社の特性や文化を反映し、従来の枠にとらわれない柔軟な設計が特徴です。採用時のアピールポイントとなり、企業の個性や魅力を効果的に伝える手段にもなります。

3. ユニークな人事制度を導入するメリット

ユニークな人事制度は、働きやすい環境を創出し、社内コミュニケーションを活性化します。これにより業務連携が改善され、意見交換が促進されます。また、福利厚生の充実により休暇取得が容易になるなど、早期離職防止だけでなく、業務効率の向上や社員満足度の増加にもつながります。結果として、企業の魅力が高まり、優秀な人材の獲得と定着に寄与します。

4. ユニークな人事制度を取り入れている企業の事例

ユニークな人事制度を取り入れている企業の事例を、それぞれの分野ごとに紹介していきます。

4-1. 働き方系

◆パスクリエイト株式会社

パスクリエイト株式会社は、広告代理店事業やインターネットマーケティング事業などを行っている企業です。

「シエスタ」というスペイン語圏の慣習である昼寝を取り入れ、昼休み以外に15分~30分ほどの昼寝を積極的に認めています。

同社は他にも、始業時間よりも前に出社すれば最大1,000円が支給される「早起きは1,000円の得制度」や、正直にずる休みを申告すれば3ヶ月に1回までは当日であっても有給休暇扱いとなる「ずる休みを笑って許しちゃう制度」などユニークな制度を多く取り入れています。

参考:パスクリエイト リクルートサイト

◆Sansan株式会社

クラウド名刺管理サービスの企画、開発、販売を行っているSansanも、ユニークな社内制度を取り入れている企業です。

制度の内容だけでなく、制度のネーミングがユニークなのもSansanの特徴です。たとえば、社長と社員数名でランチをする制度は「テランチ」、在宅勤務制度は「イエーイ」、平日に休みが欲しいときに土日と出勤日の振替ができる「どにーちょ」などです。

参考:企業成長を支える生産性向上を実現、Sansanの「働き方革新」の実践に学ぶ

4-2. 評価・表彰系

◆未来工業株式会社

未来工業株式会社は、電気設備資材、給排水設備、ガス設備資材の製造販売をおこなっている企業です。

ユニークな制度を設けていることで有名な企業で、社内制度も充実していますが、評価制度として「改善提案活動」があります。この制度は、どのような提案でも社内の改善提案をすると、1件につき500円もらえるというものです。

社員の意見を積極的に取り入れることで、社員が働きやすい環境を作れるようになります。

参考:未来工業を知る

◆株式会社カヤック

日本的面白コンテンツ事業を行っている企業とあって、カヤックは評価制度も非常にユニークです。

どの制度も特徴的ですが、そのなかでも特にユニークなのが「ぜんいん人事部」です。全社員が人事部に所属しており、社員の採用や評価に携わっています。全員で成長のためのフィードバックを実施し、お互いに働きやすい環境を作っています。

また、お互いに評価し合った結果をランキングにし、全員で報酬を決定しているのも大きな特徴です。

参考:ぜんいん人事部になりました

◆太陽パーツ株式会社

同社は、「大失敗賞」という独特な表彰制度を導入しています。これは挑戦の結果失敗した社員を半年ごとに表彰し、表彰状と金一封を贈るものです。失敗を咎めるのではなく励ますことで、社員のモチベーション向上と良好な社内雰囲気の醸成を図っています。

他にも「縁の下の力持ち賞」など遊び心ある賞があり、社員が自由に仕事に取り組める企業文化を形成しています。

参考:失敗は挑戦したものだけに与えられる勲章「大失敗賞」でモチベーションUP!

4-3. 福利厚生系

◆株式会社サイバーエージェント

メディアやゲーム事業などを手がけるサイバーエージェントは、ユニークな福利厚生として女性活躍促進制度があります。

「macalonパッケージ」という女性社員のための制度で、妊娠・出産・育児を経ても働きやすい環境を作るための8つの制度をパッケージ化しています。8つのうち2つを紹介すると、1つは「エフ休」という女性特有の体調不良のときに月1回利用できる特別休暇です。

もう1つは、妊活や妊娠に興味、不安を抱いている社員に対し、月1回30分の専門家による個別カウンセリングが受けられる「妊活コンシェル」があります。

参考:「“自分らしい働き方”の選択肢を」社員の挑戦を応援する制度「macalonパッケージ」

◆株式会社Eyes, JAPAN

株式会社Eyes, JAPANはソフトウェアやネットワーク構築などを行っている企業で、福利厚生の内容がとてもユニークです。仕事効率の向上のために、さまざまなものが職場に用意されています。

「フリービタミン制度」は、バナナやオレンジなどが職場に常備されており、フルーツを食べることで血糖値を上げてより頭が働くようにするものです。

「フリーカフェイン制度」は、いつでもエスプレッソマシンでコーヒーが飲める制度で、本物の味を知ることで仕事の質も高めるという狙いがあります。

参考:Eyes, JAPAN | Welafare

4-4. 業務効率・スキルアップ系

◆株式会社ツナグ・ソリューションズ

採用コンサルティングのツナグ・ソリューションズは、独自のデータベースを活用し採用関連業務を幅広くサポートしています。

同社の「勉強休暇」は、年度内に最大5日間取得可能で、10万円までの手当が支給されます。取得には本部長会での承認が必要で、学んだ内容を社内で共有することが条件です。座学に限らず、職業体験なども対象となり、社員の自己啓発と会社への貢献を促進しています。

参考:勉強休暇で社員が資格取得!株式会社ツナグ・ソリューションズ【前編】

◆株式会社タイミー

今急成長を遂げているタイミー社は、様々なプロジェクトでのクリエイティブを支えるエンジニアを支援するための「DevEnable室」を設立し、多くの制度を準備しています。

中でもユニークな「文豪待遇制度」は、開発組織のメンバーがテックブログや登壇資料の執筆活動を支援するもので、専属編集者、執筆活動費の全額負担、デザイン支援、集中執筆環境の提供などが含まれます。

目的はメンバーのキャリア形成支援と経験のアウトプット促進で、これは「TDE10(Timee Dev Enable)」と呼ばれる開発組織進化のための10の施策の一部として実施されています。

参考:Timee Dev Enable

4-5. リモートワーク系

◆株式会社はてな

株式会社はてなは、2020年から「フレキシブルワークスタイル制度」を導入。特筆すべきは他社と比較してかなり手厚いリモートワーク手当。「在宅勤務一時金」として在宅勤務手当に加えて在宅環境準備を目的にした2万円が支給される他、毎月2万円の在宅勤務手当も支給されます。

また、2022年からは在宅・出社勤務の自由選択を継続しつつ、居住地制限を「全国」に拡大し、フルフレックス制度を導入しています。

参考:はてな、働き方制度をアップデート。働く時間や場所に捉われないフレキシブルワークを推進

◆アドビ株式会社

アドビは、社員の多様な働き方を支援するため、「リモートワーク」と「ハイブリッドワーク」の選択制を導入しています。リモートワーカーは全国どこでも働くことができ、オフィス出社は「出張」扱いとなります。また、コアタイムのないスーパーフレックス制を採用し、時間と場所の柔軟性を高めています。

さらに、家族サポートとして産休・育休期間を一般的な基準より長く設定し、男性の育児休業も16週間と充実させています。また、社員の自己啓発を支援する奨学金制度「ラーニングファンド」も用意されています。

これらの制度により、社員は自然豊かな地方での勤務や、仕事と育児、学業の両立など、個々のライフスタイルに合わせた働き方を実現しています。

参考:育児も自然も仕事もMBAも!やりたいことをあきらめないアドビのフレキシブルな働き方

5. ネーミングも内容もユニークな人事制度を考えよう!

ユニークな人事制度の導入では、社員のニーズに合致した内容が重要です。目的は働きやすい環境の創出であるため、単に他社と差別化を図るための奇抜な制度は効果的ではありません。従来の型にはまらない制度であっても、社員の実際のニーズを満たす設計にすることで、早期離職防止に効果を発揮します。このアプローチにより、社員満足度を高め、長期的な人材定着を促進することができます。