売り手市場の時代、会社に価値がなければ人は集まらない

リファラル採用に注力するようになったきっかけを教えてください。

嶋岡様 リーマンショックが大きなきっかけではありました。今、振り返れば日本の人口のピークは2004年ですので、その中でどう戦っていくかという課題があったと思います。5年、10年先を考えると、採用を強化したいのですが、20年前のように採用できる時代ではありません。お客様、競合他社さんにしても、採用したいと考える対象者は同じですので、人口減少によって採用競争に拍車がかかるのは必至です。その中で私たちがより優秀な人材を採用するためには、我々の会社の価値を上げていかなければいけないと思っています。

リーマンショックで何か会社が変わったことはありますか?

嶋岡様リーマンショックを機に5年後、10年後重要になると予測される産業に関する情報や製品情報・技術情報をエンジニアに積極的に発信するようになりました。
リーマンショックを契機として完全に終了したプロジェクトや、日本から海外へ移管した仕事があった一方で、私たちとの関係を継続してくれたお客様もいらっしゃったという背景があります。ということは、我々としてはこれからエンジニアの仕事として重要になるものをより戦略的に選別しなければならなくなったのです。
その理念の元、エンジニアの羅針盤になるよう作りあげたのが『技術戦略マップ』です。この技術戦略マップに沿って営業、採用、教育、評価を行って5年、10年先にもお客様から支持され、選ばれ続けるエンジニアをより多く生み出しています。
たとえリーマンショックのようなリセッションがもう一度きたとしても、エンジニアたちが活躍し続けられる形を目指しています。

一番重要なのは”今いる社員の満足度”

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リファラル採用には何が重要だと思いますか?

嶋岡様新しく採用することが一番大事かというと、私はそうは思っていないんです。やはり中にいる社員が会社や仕事に誇りを持っていなければ、友人や周りの人に当社を勧めてくれないと思うんです。今いる社員が満足しないかぎり、新しい仲間は入ってこないし、入ってくれたとしても、すぐに辞めてしまうでしょうね。
リファラル採用というのは当然重要ではあるのですが、そもそも我々が一番大切にしているのは、テクノプロ・デザイン社で働くことに誇りを持っている、働き続けたいという社員を増やすことです。そのために経営層は会社の戦略やフィロソフィー(企業理念)をどんどん社員に伝えています。
大事なのは本当に会社が戦略やフィロソフィーの通りになっているかどうか。ちゃんと成長できる会社なのかとか、誇りを持って仕事ができる会社なのか、そういうものが年々しっかりと積み上がってないといけない。
外にだけいい顔をして、素晴らしいことを発信しても、会社が成長することはできなくて、必ず「中にいる社員がどう思うか」がベースなんですね。
会社に対する満足度が高いことで、社員は自分の言葉で会社や仕事の魅力を友人や周りの人に伝えてくれると思うんです。中から外へ自分たちの言葉で発信できる人間によって会社の文化が構成されると思っています。結果的にみんなに来ていただけているのだと思います。

エンジニアが新しいことに挑戦できる環境

誇りをもてる会社、価値のある会社であるために具体的にされていることは何ですか?

嶋岡様もちろん給料を上げることも大切で、2010年から給与・賞与ともに前年比増できています。
でも、私が一番大切だと思うのはエンジニアが何を開発したいのか、誰とどんな仕事をしたいのかです。
例えばエンジニアが新しい技術に興味を持っても、技術の進化はすごくスピーディーで社内にゼロから新しい環境を作るというのは難しいです。そこで会社が、M&Aをしたり、アライアンスによりAI、データサイエンス、サイバーセキュリティーなどの新しいテクノロジーを取り入れています。こうして今後必要となる技術をエンジニアが勉強でき、さらには選択できる環境を作っています。常に彼らが何に興味があるのか、どういう技術を身に付けたいのか、そういうものを会社が用意していかなければいけないと思っています。
また、エンジニア自身の叶えたい夢を会社がバックアップする『自己実現活動』を2011年にスタートしました。私が自己実現委員会の委員長をしているのですが、なりたい自分の姿というものを持っている人が手をあげて、我々はその内容を聞いてサジェスチョンしていくというものです。
例えばなりたいエンジニア像に向けて、こういう資格を取りましょう、こういったプロジェクトで経験を積みましょう、といったふうにアドバイスしたり、研修受講の環境を整えています。
社員7000人全員が『自己実現活動』に手をあげるかというと、まだそうではなく、たくさんの社員が夢や希望、目標を探しながら働いています。引き続き、彼らに気づきを与えて行きたいと考えていますので、気づいてもらうために、高く評価される技術者像や、今後伸びるであろう産業などの情報をどんどん発信するんですね。仕事を強制するのではなく情報をしっかりと開示して選んでもらう。選んだ中でどのように自分が成長するか。自分で選んだ道だからこそ、教育や研修を受けること、仕事内容を変えることに意欲的になれると思うんです。そしていつか社員7000人全員が自己実現活動にノミネートしてほしいですね。

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今後の目標や課題はありますか?

嶋岡様会社としてはデータやお客様のヒアリングなどいろいろなものを駆使して、常にエンジニアの知識やスキル、そして市場価値が上がるような環境作りをしていて、それには自信があります。
しかしまだ「本当にその産業や技術が重要になるのかな?」という声もあります。仮に、AIがエンジニアの過去の経歴を見て「あなたはこういうエンジニアになるほうがいいですよ」と提案しても、本当に納得して行動してくれるのはそう簡単ではないです。でもそれはエンジニアたちが理解できないのがおかしいというのではなく、我々のアプローチの仕方、伝え方を改善しなければいけないと思っています。

エンジニアの方、もしくは働く仲間においてどんな人と働きたいか、そのキャラクターや人物像はありますか?

嶋岡様 人にはいろいろなプライオリティーがあり、たくさん稼ぎたいという人もいるし、家族が大事な人もいます。ですから、画一的に決めつけるつもりはありません。ただ自分が成長できるような教育の機会、仕事、プロジェクトを活かして将来どういったエンジニアになりたいのかですね。いろいろ自分で調べたり、耳や目で確認したり、迷いながら、苦しみながら、少しずつでもいいので、自分の目標を見つけられるような人がよいですね。不安もあるかもしれませんが、そこに一歩二歩足を踏み出していく人材というのを期待しますし、採用したいと思っています。

社員のみなさんにはどのようにリファラル採用に取り組んでもらいたいですか?

嶋岡様会社はより楽しくワクワクできるような新しい技術やソリューションをどんどん取り入れて、エンジニアが成長できる土壌を作っています。ですので、まずはその土壌の中で活躍をすれば、今以上に成長できる、給料が上がる、楽しいプロジェクトを担当できるということを体感してもらいたいです。
リファラル採用というのは全く強制ではないので、本当に心の底から、会社や仕事に満足し自分自身の成長を感じた上で、大切な人に会社を勧めていただきたいと思っています。

エンジニア個人の市場価値が高くなるような市場選定を会社が行い、それをもとにエンジニアが目標やなりたい自分のために選択できる。そういった環境作りをとても戦略的に行われていることがわかりました。本日は貴重なお話ありがとうございました。