リファラル採用のインセンティブとは?
何かしらの目標を達成するための「刺激」となる施策のことをインセンティブといいます。
リファラル採用の場合は、「紹介経由での内定」「紹介(声かけ)の数」等に対して、何かしらの表彰、報奨金、景品等を用意するケースが多いです。
「リファラル採用といえばインセンティブ(報酬)」というくらい、連想する人は多いと思います。
一方で、インセンティブをどのように決めれば良いかを明確にイメージできている人は少ないのではないでしょうか。
どのように決めていくのが良いか、基本的な考え方のプロセスをお伝えします。
リファラル採用の報酬相場
紹介者へのインセンティブは10~20万円程度が中心
一般的に、正社員採用の場合は5~20万円、非正規採用の場合は5000円~1万円がボリュームゾーンです。
紹介者と応募者への支給額の割合としては、紹介者:応募者=2:1程度です。
当社が取得したインセンティブに関するアンケート結果では、90%近い企業がインセンティブを設定しています。紹介者のみにインセンティブが半数、紹介者・被紹介者の両方、被紹介者のみと続いています。

職種別のインセンティブ傾向
職種別で見ると、技術・エンジニア系はインセンティブがやや高い傾向にあり、20~30万円層が他職種に比べ多くなっています。ITエンジニア不足が深刻な企業では、紹介報酬を50万円以上に設定するケースもありますが、高額報酬はリスクもあるためしっかりした考慮が必要です。
逆に営業・マーケティング系やサービス・事務系は1万円未満が割合が高い傾向です。職種別設定を導入する場合は、社員の間で不公平感が生じないよう、設定の根拠(外部媒体に頼った場合の推定コストなど)を明示することが望ましいです。

リファラル採用のインセンティブは違法?合法?
リファラル採用で報酬を支払う行為は、適切に設計されていれば違法ではありません。
しかし、職業安定法や労働基準法から逸脱すると、重い罰則の対象となる可能性があります。
職業安定法ではどうなっている?
職業安定法の第四〇条には、下記の通りの記載があります。
(報酬の供与の禁止)
第四〇条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
つまり、労働者の募集を行う者が、募集に従事する者に対して報酬を与えることを原則として禁止しています。この規定の目的は、免許を持たない個人が「業」として職業紹介を行い、利益を得ることを防ぐ点にあります。 無許可で有償の職業紹介を行ったとみなされた場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるリスクがあります。
ただし、この条文には「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」という例外規定が存在します。リファラル採用の報酬を「紹介業務という労働に対する対価」として位置づけ、賃金の枠組みで支払うことが適法性を確保するための鍵となります。
就業規則への明記と賃金としての位置づけ
報酬を「賃金」として認めるためには、就業規則や賃金規程への明記が不可欠です。
労働基準法において、賃金に関する事項は絶対的必要記載事項に該当します。具体的には、支給対象者、支給額、支給条件、支給時期、そして不採用時や早期退職時の取り扱いを明確に定める必要があります。常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則の変更を所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。
規程に定めがない状態で場当たり的に報奨金を支給する行為は、賃金性の根拠を失い、職業安定法違反と指摘される可能性を高めます。
高額報酬の設定に伴う副作用と法的リスクの上限
報酬額をあまりに高額に設定すると、法的なリスクが増大します。
一般的に、1名あたりの紹介報酬が30万円を超えると、高額な部類とみなされます。 高額な報酬は、社員が本業を疎かにして「紹介業」に没頭しているとみなされやすく、職業安定法の「賃金」としての例外規定から外れるリスクが高まります。
また、高額すぎる報酬は、不採用になった際の関係性悪化や、報酬目的のミスマッチな紹介を誘発する原因となります。
社外の個人や元社員への報酬支給
リファラル採用の報酬対象は、原則として自社の現職社員に限定すべきです。
元社員(アルムナイ)や内定者、業務委託先、外部の知人に対して報酬を支払う場合、企業との間に雇用関係がないため、支払う金銭を「賃金」として定義できません。
雇用関係のない個人に紹介の対価を支払う行為は、厚生労働省の認可を受けた職業紹介事業者でない限り、法に抵触する恐れが高いと判断されます。
どうしても外部協力者に報酬を支払いたい場合は、金銭ではなく、サンクスカードや少額のギフトなど、実質的な「紹介の対価」とみなされない範囲に留める配慮が求められます。
| 対象者の属性 | 報酬支給の可否 | 法的な位置づけ・根拠 |
|---|---|---|
| 正社員・契約社員 | 可能 | 賃金・給与として支給可能 |
| パート・アルバイト | 可能 | 雇用契約に基づき賃金として処理 |
| 役員(委任型) | 慎重な判断が必要 | 役員報酬規程との整合性が必要 |
| 退職者(アルムナイ) | 原則不可 | 雇用関係がなく職業紹介とみなされる |
| 内定者(入社前) | 原則不可 | 賃金としての性質を持たせられない |
| 業務委託・外部知人 | 不可 | 無許可の職業紹介事業に該当する |
入社した本人への「お祝い金」に関する2021年改正の注意点
2021年4月の職業安定法改正により、職業紹介事業者が求職者に対して「入社お祝い金」を支払うことは禁止されました。自社で直接雇用する企業が新入社員に一時金を支払うこと自体は直ちに違法ではありませんが、注意が必要です。
理由として、入社を条件とした金銭提供は「就業の誘因」として過度な影響を与え、職業選択の自由や公正性を損なうとみなされる可能性があるためです。
メリットも大きいため、検討が必要です。
インセンティブの決め方
実際にはどうやってインセンティブの制度を決めたら良いか、4つのステップに分けて決め方を解説します。
Step 1: どこの数値を伸ばしたいか?
まず最初に、そもそもどこの数値を伸ばしたいかを考える必要があります。
「採用数に決まってるでしょ」という声が聞こえて来そうですが、果たして本当にそうでしょうか?
実際に採用まわりのプロセスを考えた時、簡単に考えただけでも「社員が友人に声をかける数」「イベント等に参加する数」「応募数」「内定数」「採用数」「定着した数」などの数値が出て来ます。
「人はとれるけど離職率を改善したい」となれば、「入社後●ヵ月経過したらインセンティブを出す」という設計も考えられますし、「そもそも応募が全く来ていない」となれば、「1応募に対して●円のインセンティブ」とすることも考えられます。
- 応募・面談時: 紹介の数を増やしたい場合に、5,000円程度のAmazonギフト券などを支給
- 入社時: 決定の喜びを分かち合うため、10万円程度のメイン報酬を支給
- 定着時(入社3〜6か月経過後): 早期離職を防ぐため、追加で5万円程度を支給
ここは、リファラル採用をするにあたってどこがボトルネックになっているかを確認し、うまくいっていない要素があればピンポイントで改善をすることも想定して考えるのが良いでしょう。
Step 2: 評価単位をどうするか?
インセンティブというと個人に与えるイメージが強いかもしれませんが、そうすると個々人によりやる気がバラバラになりがちです。
一部の人が頑張ってくれても、全社としてはなかなかリファラルが増えなかったり、その人の人脈が尽きてしまったらその後に続かなかったり、というリスクもあります。
おすすめはチーム単位で目標を作るということです。
横でのコミュニケーションが活発になり、協力してくれる人が増えたり、活発に動いている人のノウハウが共有されるケースもあります。
「紹介したいとは思ってるけどどうしたらいいか分からない」という人はとても多いので、そこに対するフォローがされると全社的に数字が上向いてきます。
非常に効果的な手段なのでチーム単位でできると良いですが、社風によっては難しいということもあります。実情と照らし合わせて可否をご検討いただくと良いでしょう。
Step 3: インセンティブを与える対象をどうするか?
インセンティブは紹介をしてくれた人に与えるのが普通ですが、紹介された人に対しても与えることが効果的です。
これは紹介された人のメリットというよりも、紹介する人の心理的なハードルを下げることが目的で作られることが多くなっています。
ちょうど転職を考えている友人がいれば「うちの会社に興味ない?」と簡単に聞けますが、そういったわかりやすい転職顕在層だけを対象とすると、なかなか母集団形成もできません。
「必ず転職したいと思ってるわけではないけど…」という準転職顕在層にもアプローチができると、候補になる人がぐっと増えます。
ただ、自分から仕事探しをしていない人に声をかけるのはハードルが高くなりがちです。
会社や紹介者にとってはメリットのあるリファラル制度も、被紹介者に対してのメリットは目に見えにくく言語化しにくいので、「いきなり誘っても迷惑だよな…」となってしまいます。
そこで、被紹介者にもメリットがある制度を作ることができれば、「うちって●●っていう制度があってさ」と、制度そのものをフックに紹介する話題をふりやすくなります。
例えばですが、飲食店の会社がリファラル採用を行う際に「説明会に来てくれたら●●の無料券がプレゼントされるらしいよ」といった報酬があれば、かなり声がけしやすくなります。
このような効果を期待し、被紹介者へのインセンティブも一考の余地があります。
Step 4: 報酬をどうするか?
まず前提として、インセンティブは高ければ高いほど良いというわけではありません。
上記でも少し触れましたが、リファラルは友人・知人への声のかけやすさが大事になります。
そこで大きな報酬を用意してしまうと、逆に「お金がほしくて声をかけたとは思われたくないな…」となってしまうこともあります。
また、実際にお金を目的に人集めをされても、入社してから活躍・定着しない等の問題に悩まされる可能性もあります。
報酬の額は会社の雰囲気や社員の期待次第ですが、「スキルのある人のキャリア採用」「新卒・第二新卒の採用」「非正規の採用」などでも考え方が変わります。
報酬金は高すぎても効果は薄い
「1万よりは10万、10万よりは30万支給の方が効果が出るのではないか」
そう考える方が多いかもしれません。
実際、当社のユーザー様でも、Refcomeを導入以前に思うように成果が出ないためインセンティブ金額を倍にしたというケースも少なくありません。
しかしながら、インセンティブ金額を極端に上げて成果につながった、というお話はほとんど聞いたことがないというのが、実例ベースでの結果になります。
当社が就業者向けに行ったアンケートでも、「インセンティブは特に求めていない」が約半数となっています。インセンティブを求める回答も、10万円前後がボリュームゾーンになっており、一般的に求められているインセンティブが不足している様子は見られません。

社風にもよるかとは思いますが、当社のユーザー企業様では、「報奨金目的で紹介したと友人や同僚に思われるのが嫌」「支給額が高いと、プレッシャーがかかる」という現場の声も多い印象です。
逆に、「インセンティブ目的での紹介が増えてしまい、面接通過率が半分になってしまった」といったこともあったそうです。
インセンティブは「素敵な仲間を集めてきてくれたことに対する会社からの“お礼”」ですので、支給額よりも、メッセージ性を意識することをRefcomeでは推奨しています。
報奨金以外のインセンティブ、他社事例は?
インセンティブを「素敵な仲間を集めてきてくれたことに対する会社からの“お礼”」と捉え、報奨金以外の形で用意している事例をご紹介いたします。
全社会議での表彰
200名規模の中途採用では、週に1度の全社朝礼で社長様から表彰していたり、数千~数万人規模のアルバイト採用でも、年1の全社会で店舗売上上位者と同等に、リファラルが盛んだった店舗やスタッフを表彰しているケースが多数あります。
社長や、役員とのランチ
100名規模の新卒採用では、紹介成績上位者に、社長や役員クラスとのランチの機会を提供している事例があります。
紹介者/応募者の会食
100~500名規模の中途採用では、紹介者/応募者とのランチ費用補助を行っています。採用につながった場合だけではなく、不採用だった際にも、きちんとコミュニケーションが取れるよう、補助を出している企業様もいらっしゃいます。
自社(または自社グループ)のお買い物券
自社のサービスについて、あたらめて知って欲しい。お友達と、気軽に食事やお買い物を楽しんで自社を知るきっかけを持ってみて欲しい、という想いを込めて、お買い物券やお食事券を提供している事例も複数あります。
終わりに
ここまで、インセンティブに関する基本的な考え方をお伝えしてきました。
インセンティブはあくまでも、素敵な仲間を連れてきてくれたことに対する会社からのお礼です。
どんな形だったらお礼の気持ちが1番伝わりそうか、ぜひ考えてみてください。
具体的に相談してみたい場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
