イベントレポート

生成AI時代の採用とコア業務・ノンコア業務の境界──人にしかできない人事の仕事とは

2025年7月17日

「スカウトや日程調整に追われて、本当に大事な仕事に手が回らない」
「生成AIが採用を変えると聞くけれど、自社では何から手をつければいいのか分からない」

──多くの人事部門が、限られたリソースのなかで同じジレンマを抱えています。

そんななか開催した共催ウェビナー「採用領域のAI活用最前線に迫る──生成AIとリファラル採用で作る未来の人事組織とは」では、HR領域で複数の生成AIサービスを展開する株式会社Algomatic Worksの高橋椋一氏と、850社のリファラル採用支援を手がけてきた株式会社ウィルオブ・パートナー代表の清水巧氏が、AI時代の採用と人事組織のあり方を語り合いました。

本記事はそのレポートです。世界の採用AIトレンド、日本だけに見られる特殊事情、そして人事の時間配分を根本から変える「コア業務・ノンコア業務」の考え方までをお届けします。

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登壇者紹介

高橋 椋一 氏株式会社Algomatic WorksCOO

NTTデータに新卒入社し、AI・ロボティクス技術の研究開発に従事。その後、ソフトバンクにて社内ベンチャーの立ち上げに事業責任者として従事し、2022年2月グッドパッチに入社。シニアプロデューサーとしてAI・FinTech領域のプロジェクトを統括。AIエージェントの社会実装を目指し、2023年7月にAlgomaticへ参画。「リクルタAI」「Algomatic Freelance」「 .AI CAREER」など、HR×生成AI領域で事業開発を推進。

NTTデータに新卒入社し、AI・ロボティクス技術の研究開発に従事。その後、ソフトバンクにて社内ベンチャーの立ち上げに事業責任者として従事し、2022年2月グッドパッチに入社。シニアプロデューサーとしてAI・FinTech領域のプロジェクトを統括。AIエージェントの社会実装を目指し、2023年7月にAlgomaticへ参画。「リクルタAI」「Algomatic Freelance」「 .AI CAREER」など、HR×生成AI領域で事業開発を推進。

清水 巧株式会社ウィルオブ・パートナー代表取締役社長

SansanでのCS組織立ち上げを経て、2014年に株式会社リフカム(現:株式会社ウィルオブ・パートナー)を設立。リファラル採用支援サービス「Refcome」を通じて数多くの企業の制度設計・風土改革を支援。現場を巻き込むノウハウに精通する。2018年Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人」選出。2024年よりウィルオブグループにて企業の採用力強化をリードする。

SansanでのCS組織立ち上げを経て、2014年に株式会社リフカム(現:株式会社ウィルオブ・パートナー)を設立。リファラル採用支援サービス「Refcome」を通じて数多くの企業の制度設計・風土改革を支援。現場を巻き込むノウハウに精通する。2018年Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人」選出。2024年よりウィルオブグループにて企業の採用力強化をリードする。

採用は、いまHR領域で最も生成AI活用が進む「最前線」

リファラル採用に取り組んでいる企業は62%にのぼる一方、うまく運用できている企業は5%弱。「やっている」と「成果が出ている」の間には、大きな隔たりがあるのが実態です。

その背景で急速に存在感を増しているのが生成AIです。高橋氏は、生成AIはスマートフォンやSNS、インターネット以上のスピードで業務に溶け込んでいると指摘します。なかでもHRは「超有望分野」だといいます。

高橋氏:HRは生成AIの超有望分野です。人事採用領域には、職務経歴・面接や社内面談の音声記録・社内のマニュアルや管理規定など、これまでの技術では扱えなかったデータが大量にあるからです。

なぜHR、とりわけ採用なのか

HRのなかでも、グローバルでも国内でも、生成AI活用が最も進んでいるのが採用領域です。理由は、人事業務のなかで最も負担感が強いのが採用業務だからです。

高橋氏:HR領域のなかで生成AIの活用が進んでいるのは、グローバルでも国内でも圧倒的に採用領域です。人事業務のなかで最も負担感が強いのが採用業務で、その負担感や忙しさが生成AI導入のニーズを後押ししています。

世界の6トレンドと、日本だけの「候補者体験」シフト

高橋氏は、海外の「生成AI×採用」サービスの動向から、特に活用が進む6つの領域を挙げました。

▼AI活用が特に進む6つの採用業務領域

  • AI面接官
  • 候補者データ管理(AIを組み込んだ採用管理システム)
  • AIスカウト
  • 面接サポート(コパイロット)
  • 日程調整の自動化、そして採用バイアスの監査です。

海外では、AIアバターが候補者と数十分の面接を行い、結果レポートまで自動生成するサービスが爆発的に伸びている国もあります。求人票を入力するだけで巨大な人材データベースから候補者を推薦し、スカウト文の作成から送信までこなすAIリクルーターも登場しています。

日本は「世界トップクラスに使いやすい」が、進み方が違う

ここで高橋氏が強調したのが、日本ならではの事情です。

高橋氏:採用でAIを使うことに対し、慎重な国も多くあります。EUは慎重な運用を求める法令があり、アメリカは審査を経ないと使いづらい。一方で日本は、人口減少・労働力不足を背景に、リスク緩和と活用促進の方向で進んでいます。日本の人事は、HR領域での生成AI活用が世界トップクラスで使いやすい環境にあります。

使われ方も海外とは異なります。大卒者が年間1,000万人規模で生まれ、買い手市場が続く国では、企業が効率化するためのAI導入が進みやすい。対して日本は大卒者が減少し、有効求人倍率が上がる売り手市場。だからこそ、効率化そのものより候補者体験の改善につながるAIが広がる、というのが高橋氏の読みです。

高橋氏:日本での活用動向を把握するキーワードは「候補者体験重視」です。人事部の効率化というよりも、候補者体験の改善につながるAIが普及していきます。

AI面接官も、候補者へのフィードバックを手厚くするなど、体験向上にフォーカスして導入される傾向があります。

人事の時間配分「7:3」が「3:7」に逆転する日

清水のセッションの核心が、この「コア業務とノンコア業務」の仕分けです。

清水:人事担当者にノンコア業務とコア業務の比率を聞くと、平均で7:3。「忙しくてノンコア業務メインになってしまっている」という声が多いです。

夜間や早朝にスカウトを大量送信し、日程調整や返信に時間を奪われ、残った時間でようやくコア業務に向き合う──そんな状態です。

3〜5年で、比率は逆転する

採用市場は、1997年の新卒一括採用の確立から、中途採用の一般化、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用の登場、RPOやATSによる効率化へと、短いスパンで変化を重ねてきました。その延長線上で、いま起きているのが「ノンコア業務の自動化」です。

清水: 生成AIによる採用の効率化・自動化は、5年以内に一気に加速します。AI面接やAIによる日程調整がATSと同じように「当たり前に入っているもの」になったとき、人事の付加価値はコア業務の高度化へ移ります。3〜5年で7:3が3:7へ変わってくると考えています。

そのとき求められるのは、外部ツールやAIで生産性を上げ切ったうえで、人にしかできない業務ができる人事になっていく、と清水は語ります。

効率化で生まれた時間を、どこに使うべきか

効率化はゴールではありません。AIで生まれた余白を「どこに使うか」が、ここからの論点です。高橋氏は自社の方針を、こう明言しました。

高橋氏: AI時代の採用組織は、人事や現場のハイヤリングマネージャーが泥臭いことにこそ100%の時間を使えるよう設計すべきです。生成AIで組織に余白を作り、その余白を候補者体験の向上に最大限振り向ける。それが未来の人事組織のあり方です。

実際の例として紹介されたのが、ある選考のケース。

高橋氏: 場所がどこであろうと、一旦対面で会いに行きます。候補者がオーストラリアに住んでいても、「絶対入っていただきたい、会いに行こう」と。ルーチン業務をAIに任せて時間を作れているので、温度感が伝わる接点に時間を使えます。

スカウトをリクルターだけでなく全社員で行う体制や、現場主導のソーシング、内定者全員へのオファーレターも、生まれた余白を再投資した結果として語られました。

そして清水氏は、その余白を活かす先としてリファラル採用の重要性が高まると指摘します。

清水: 大量採用が必要なポジションや、簡易面談で済むポジションは、生成AIで効率化できます。すると一時的に大量採用はしやすくなる一方、採った人をいかに定着させるか、難易度の高い職種をいかにアトラクトするかの重要性が高まります。

実際、エンジニアのような難職種では、リファラル経由の紹介比率がエージェントに次ぐ2位まで上昇する傾向が見られるといいます。

「1対N」から「1対1」へ

リファラル採用は一般に、人事から全社員へ一斉にメール配信して協力を呼びかける「1対N」の施策が中心でした。清水は、ここから「特定の社員に、狙って依頼する1対1施策」へと進化すると見ています。

とはいえ、誰に・どう依頼し、紹介された候補者をどうアトラクトするかは、人事にとって判断が難しい領域でした。そこでRefcomeでは、依頼先の社員を年齢・入社年月・エンゲージメント・過去の協力者とのペルソナ近似から生成AIで特定し、依頼文面の作成まで支援する実験的な取り組みを始めています。

パネルディスカッション──AIを「活かせる企業」と「そうでない企業」を分けるもの

参加者から事前に寄せられた質問をもとに進んだトークセッション。そのなかで、両登壇者の見解がぴたりと重なった瞬間がありました。

「生成AIをなかなか採用業務に取り込めない企業と、取り込めている企業の違いはどこにあるのか?」という問いに対して。

高橋氏は、AIツールの整備状況や予算の有無は、実は大きな変数ではないと答えます。

高橋氏: AIツールの導入可否以上に、各社がどんな採用活動を行いたいかを言語化できているか。それがあって初めてAIに命令ができ、人と同じ精度でAIの性能を引き出せます。「面談は人がやるべきだ」という固定観念よりも、採用要件が形式化されていないことの方が、むしろ導入のハードルになっています。

清水も、リファラル採用の成否が「成功要因を言語化できているか」で分かれると応じます。AIは、いわば入社したばかりで自社を何も知らない新人のようなもの。だからこそ、自社のカルチャーや求める人物像、採用戦略を言葉にして教えられるかが、これまで以上に問われる──。

清水: 各社の求める人物像や採用戦略の方針を言葉にして、何も知らないAIに命令を出し教えてあげる。これは元々重要なスキルでしたが、withAIの文脈ではより一層大事になっていきます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 生成AIで採用を効率化すると、人事の仕事はどう変わりますか?

定型的なノンコア業務(書類選考、初期対応、スカウト、日程調整、データ入力など)がAIに移り、人事は採用戦略の立案や候補者・社員へのアトラクトといったコア業務に時間を使えるようになります。いまは平均7:3のノンコア偏重が、3〜5年で3:7へ逆転していくと見られています。

Q2. なぜ採用領域で、ほかのHR業務より生成AI活用が進んでいるのですか?

人事業務のなかで最も負担感が強いのが採用業務であり、その負担の大きさがそのまま導入ニーズになっているためです。加えて、職務経歴や面接記録など、従来は扱えなかった非構造化データを生成AIが分析できるようになったことも背景にあります(完全版レポートで世界6トレンドの詳細解説を収録)。

Q3. 日本の採用AIは、海外と同じように進むのでしょうか?

進み方は異なります。日本は法規制が活用促進の方向にあり、世界トップクラスに使いやすい環境です。一方で売り手市場が続くため、効率化そのものより「候補者体験の改善」につながるAI活用が広がる傾向があります。

Q4. AI予算は、どのように確保すればよいですか?

生成AI用の予算を新規に取るのは難しいケースが多く、RPOや業務委託のリクルーターに充てていた予算をAIエージェントへシフトする企業が増えています。中途採用で年間30〜40名を超えてくると、コストパフォーマンスが出やすい目安とされています(完全版レポートでパネルディスカッション全5問の質疑応答を収録)。

Q5. AI時代に向けて、今日から何を始めればよいですか?

まず自社にとってのコア業務・ノンコア業務を棚卸しすることです。何がコアかは企業のポリシーによって変わります。ノンコアと整理できた業務から、AIやRPOで効率化できないかを情報収集する──これが着手しやすい第一歩です。

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