転職潜在層を発掘するタレントプール運用のポイント
2020年9月8日に開催したWEBセミナーのレポートをお送りします。
多くのスタートアップの企業から、既存の採用手法では「スキル・カルチャー」双方がマッチした人材が獲得しづらいという悩みを伺います。優秀な人材のうち、採用媒体や人材エージェントを使って積極的に転職活動をしている層はごくわずかです。そのため各社「今すぐに転職を考えてはいないが、いい話があれば聞いてみたい」という「転職潜在層」にアプローチしています。
転職潜在層にアプローチする手段の1つとして、リファラル採用に注力する企業が増えています。しかしリファラルをはじめてみても、最初は盛り上がったもののすぐに紹介がなくなってしまった、という課題を抱えておられる企業が非常に多くいます。
そこで今回は「スタートアップ企業が継続してリファラルを成功させる方法」として、株式会社LITALICOライフでリファラル採用の専任担当をされている與那覇さんにお話いただきました。
なぜ転職潜在層へアプローチをするべきか
弊社の採用ターゲットは、20~50代のライフコンサルタントというライフプランを作成するポジションがメイン。そのような方を既存の社員から紹介してもらいリファラル採用を進めた。
既存の採用手法より選考通過率が高い
そもそもなぜリファラル採用に注力しているかというと「既存の採用手法と比較し、リファラル採用では良い人材にコスト低く会える」というメリットがあるため。
既存の採用手法では、接触から採用までまでのボリュームが絞られていく”じょうご型”のモデルとなっており、KPIとして有効な母集団の数や内定率が注視されている。
一方でリファラル採用は、接触から採用までのボリュームが変わらず、限りなくストレートに近い形で進む。選考に進むタイミングには見極めが済んでいるため、「一緒に働きたい人」と思える人であり、潜在層であれば、転職の競合もいないケースがほとんどなので選考意向の離脱も少ない。そのためリファラル採用は、既存の採用手法と比較して「圧倒的に人事側の工数が少なく済み」「採用単価も押さえられる」手法であると実感している。
実際今年8月に行った採用活動の結果として、既存の採用手法は50件の面談をしてもほとんど採用に至らなかったが、リファラル経由の面談ではそのようなことが少なく、採用につながっている。
当初から転職潜在層に特化して採用することを決めていた訳ではなく、リファラル採用では良い人を採用したいと考え活動していた。しかし、結果として転職潜在層へのアプローチがほとんどであった。転職潜在層へのアプローチは、転職市場に出てきていない優秀な人材にどの企業よりも早く接触ができるため、今では非常に注力している。
転職潜在層を発掘する方法とは
能動的なアプローチで試行錯誤
リファラル採用のアプローチ方法は、2通りあると考えている。1つはSNSなどで自社のポジティブな記事などを発信して相手のアクションを待つ受動的なもの、もう1つは能動的に転職潜在層へ接触する方法。リファラル採用を推進するにあたり、能動的にアプローチをしようと考えた。
良質なリスト作成につながったメモリーパレス施策
試行錯誤する中で、一番良い転職潜在層のアプローチリストがつくれた施策は、メモリーパレスというワークショップだった。
3~4人の社員のチームを作り、設定したキーワードから想起される人の名前を手元の付箋に書いてもらうブレストのワークを行う。
キーワードの例としては、「あなたの知り合いの営業職で自社のビジョンやカルチャーに共感してくれそうな人」などがある。このような人物像に当てはまる知人の名前を書いてもらう。ポイントは「転職しそう/転職しなさそう」や「内定が出そう/出なさそう」という点は別として考えてもらい、たくさん名前を出してもらうこと。
このメモリーパレスの施策はリフカムの社員から教えてもらったものをもとにはじめた。結果としてこの施策が最も採用につながっている。今では毎月ある全社員参加の会議のプログラムに入れてもらい実施をしている。
1,リファラルの意義をきちんと伝える
メモリーパレスのワークショップで名前を出したら、絶対に紹介しないといけないのかな、と思う社員もいる。そのためワークショップを行う際に、名前を書いていただいた中から適切に絞り込みを行う旨をきちんと伝えるようにしている。
また、ワークショップを行う前に「自社でなぜリファラル採用を組んでいくのか」といった事業全体のミッションであることを事業部長などから社員にインプットしておくことが、重要なポイントであると感じている。
2,チームで実施し誘発を生む
多くの知人を想起できるかは人によって差がある。そのためチーム分けを行う際に、多くの知人を想起できるメンバーと、そうではないメンバーを同じチームになるように配置して、誘発を生むようにしていた。まずは、とにかくたくさんの名前を思い出して書いてもらうことを目的に実施している。
失敗しないタレントプール運用とは
運用をはじめてみると、リストに名前が挙がっていた人が気が付いたら転職していた、ということがあった。加えて、推薦をした社員がその候補者と連絡を取り合う仲であっても、転職をすることを知らないということがあった。
例えば、先輩後輩の関係で、後輩に対して転職を考えていることを伝える人はあまりいないと思う。相当親しい仲でもこのようなケースがあり、いつの間にか転職していたということが発生した。
そういった失敗から2つの対策を実施した。1つ目に、単に「最近どう?」と漠然と状況を聞くのではなく、「最近どう?○○さんについて人事に話したら興味を持っていて、中長期的なキャリアの選択肢として一度話してみない?」とポイントを明確にして聞くようにした。2つ目に、候補者との接触機会を定期的にとるようにした。毎回プロポーズするようなアプローチをして進捗させるようにしている。
社員の参加ハードルを下げる取り組み
社員がリファラルを進める上で、知人を誘うことに対し難しさを感じる場合もあるため、例となる紹介文も作成した。具体的には、候補者の転職意向の有無、自社を知っているかという点でタイプ分けし文章を用意した。作成した文章で共通しているキーワードに「優秀」というものがある。「あなたのことを『優秀』だと思っています」というメッセージを受け取って悪い気がする人はいないため。
また知人を誘う際の文面を考えることは、社員にとって面倒に感じられることがあるため、「この文章をそのまま送ってください」と依頼できる文章を用意した。細かな点では、会食の日程調整やお店の手配をすることもあった。
不採用についての対応
一定の確率で不採用は出るので、不採用の際は推薦者、候補者にきちんと説明し、関係が悪くならないように丁寧に対応をしている。
営業活動と同じこと
マーケティング活動が転職顕在層のリファラル採用であるとすれば、転職潜在層のリファラル採用はインサイドセールスのように、いかに商談化させていくかを考えるべきだと思う。
リファラル採用の成功のために試行錯誤された與那覇さんから、実践的な施策についてお伺いさせていただきました。今回ご紹介した内容がみなさまのお役に立てていれば幸いです。
登壇者
株式会社LITALICOにて新規事業のライフプランニング事業の立ち上げに携わる。2019年にリファラル採用推進を担当。1年で組織構成の約30%をリファラル採用経由まで引き上げる事に成功。企業や組織の壁を超えて「リファラル採用」について、研究を行うソーシャルコミュニティ「リファラル研究会」を主催している。Refcome User Award2019 リファラル推進部門 優秀賞受賞。
株式会社LITALICOにて新規事業のライフプランニング事業の立ち上げに携わる。2019年にリファラル採用推進を担当。1年で組織構成の約30%をリファラル採用経由まで引き上げる事に成功。企業や組織の壁を超えて「リファラル採用」について、研究を行うソーシャルコミュニティ「リファラル研究会」を主催している。Refcome User Award2019 リファラル推進部門 優秀賞受賞。