離職率とは何か?正しい定義と計算式
離職率という言葉は日常的に使われていますが、その定義を正しく理解している人は意外と少ないものです。自社の現状を正確に把握するために、まずは言葉の定義と計算方法を明確にしましょう。
経営課題としての離職率
離職率とは、「ある一定期間内に、組織在籍者のうち何人が退職したか」を示す割合のことです。一般的には「企業の働きやすさ」や「人材定着力」を測る指標として扱われます。
厚生労働省の統計調査(雇用動向調査)でも、常用労働者数に対する離職者数の比率として算出されています。

「退職」と「離職」の違い
「退職」と「離職」は混同されがちですが、統計上は「離職」がより広い意味を持ちます。以下のすべてが含まれる点に注意が必要です。
- 自己都合退職: 転職、独立、家庭の事情など、労働者の意思によるもの
- 会社都合退職: 解雇、早期退職募集など、企業の意思によるもの
- 定年退職: 就業規則で定められた年齢に達したことによるもの
- 契約期間満了: 有期雇用契約が終了したもの
企業が対策を講じるべき対象は、主に「自己都合による予期せぬ離職」です。定年退職などは自然減として区別して考える必要があります。
法律上の定義
実は、法律によって定められた厳密な「離職率の計算式」は存在しません。そのため、企業によって算出期間や分母の定義が異なる場合があります。他社と比較する際や、求職者に開示する際は、どの定義を用いているかを確認することが重要です。
正確な計算方法とシミュレーション
ここでは、厚生労働省や多くの企業が採用している標準的な計算式を紹介します。自社のデータを当てはめて、実際に計算してみましょう。
基本の計算式(年間離職率)
最も一般的なのは、4月1日から翌年3月31日までの1年間で算出する方法です。
| 計算要素 | 内容 |
|---|---|
| 分子 | 1年間の離職者総数 |
| 分母 | 期首(4月1日時点)の常用労働者数 |
離職率(%) = 離職者数 ÷ 1月1日(または期首)時点の常用労働者数 × 100
たとえば、期首に100人の社員がいて、1年間で10人が辞めた場合、離職率は10%となります。
ただし、期中に急激な増員があった場合、分母を「期首と期末の平均人数」にすることで、より実態に近い数値を出すことも可能です。
新卒3年以内離職率の計算
特定の採用年度や属性に絞って算出する場合の式です。新卒採用の定着率を測る際によく用いられます。
新卒3年以内離職率(%) = 対象期間内の離職者数 ÷ 対象となる入社人数 × 100
3年前に10人の新卒が入社し、現在までに3人が辞めていれば、離職率は30%です。
離職率と定着率の相関関係
離職率の対義語として「定着率」があります。両者は表裏一体の関係にあり、以下の式が成り立ちます。
定着率(%) = 100 - 離職率(%)
人事戦略においては、「離職率を下げる(ネガティブ要因の排除)」と「定着率を上げる(ポジティブ要因の強化)」の双方の視点が不可欠です。リファラル採用などは、後者の定着率向上に直接寄与する施策といえます。
日本の平均離職率と業界別トレンド
自社の数値が高いか低いかを判断するには、市場全体の相場観を知る必要があります。厚生労働省が発表した最新データ(令和5年雇用動向調査結果)に基づき、日本の現状を詳細に解説します。
日本全体の平均離職率の推移

| 項目 | 離職率(%) | 前年比ポイント差 |
|---|---|---|
| 全体平均 | 15.4% | +0.4pt |
| 男性 | 13.8% | +0.5pt |
| 女性 | 17.3% | +0.4pt |
全体の離職率は上昇傾向にあります。これは経済活動の活発化に伴い、転職市場が活性化していることを示唆しています。
雇用形態別の実態
雇用形態別に見ると、さらに大きな差が浮き彫りになります。
- 一般労働者(正社員等): 12.1%
- パートタイム労働者: 23.8%
パートタイム労働者の離職率は23.8%と高く、およそ4人に1人が1年以内に職場を離れている計算です。一般労働者においても、12.1%という数値は決して低くありません。多くの企業において、人材の流出は恒常的な課題となっています。
業界別・離職率ランキング
離職率は業界によって構造的に大きな差があります。平均値と比較する際は、全産業平均ではなく、自社が属する業界の平均と比較することが重要です。引き続き厚生労働省が発表した最新データを見ていきます。
離職率が高い業界
離職率が高い産業トップ3は以下の通りです。
- 生活関連サービス業,娯楽業: 28.1%
- 宿泊業,飲食サービス業: 26.6%
- サービス業(他に分類されないもの): 23.1%
宿泊・飲食業は、離職率が他産業に比べて突出して高い状況が続いています。主な要因として、土日祝日や深夜を含む不規則な勤務体系や、対人業務による精神的ストレスが挙げられます。また、学生アルバイトなど流動性の高い雇用形態の比率が高いことも影響しています。
離職率が低い業界
一方で、定着率が高い(離職率が低い)産業も存在します。
- 複合サービス事業(郵便局、協同組合等): 7.8%
- 鉱業、採石業、砂利採取業: 9.2%
- 製造業: 9.7%
インフラ関連や製造業は、比較的雇用が安定しています。労働組合などの組織基盤がしっかりしているケースが多いことが要因と考えられます。
新卒社員「七五三現象」の現在地
若手人材の流出は、多くの企業にとって深刻な課題です。新卒社員が入社3年以内に離職する割合は、長年「七五三現象」と呼ばれてきました。
- 中学卒: 約7割
- 高校卒: 約5割
- 大学卒: 約3割
大学卒の3人に1人が3年以内に辞める現実は、採用コストの損失だけではありません。次世代リーダー候補の欠如という、将来的な経営リスクを招くことになります。
なぜ社員は辞めるのか?離職を生む3つの構造的原因
では、なぜ社員は辞めるのでしょうか。退職時に語られる「建前の理由」と、心の中に秘めた「本音の理由」には大きな乖離があります。ここを読み解かなければ、効果的な対策は打てません。
統計データから見る「本音の退職理由」
厚生労働省の調査(令和5年若年者雇用実態調査)によると、若年層の主な離職理由は以下の通りです。
労働条件・人間関係・評価の不満
上位を占める理由は以下の4つです。
- 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった: 28.5%
- 人間関係がよくなかった: 26.4%
- 賃金の条件がよくなかった: 21.8%
- 仕事が自分に合わない: 21.7%
「条件面」と「人間関係・仕事内容のミスマッチ」が二大要因です。しかし、これはあくまで表面化しやすい理由に過ぎません。
根本には、組織と個人の間にある心理的な溝が存在します。
心理的に読み解く離職プロセス
社員が離職を決意するまでには、いくつかの心理的段階があります。突然辞めるのではなく、小さな積み重ねが限界を超えた時に行動に移るのです。
リアリティ・ショックと期待値のズレ
入社前に抱いていたイメージと、実際の現場に乖離がある状態を「リアリティ・ショック」と呼びます。
「こんなはずではなかった」という小さな失望が、信頼関係を蝕んでいきます。
- 説明されていた業務内容と違う。
- 風通しが良いと聞いていたが、実際はトップダウンだった。
こうしたズレは、採用段階での情報提供が不十分であること(情報の非対称性)に起因します。
心理的安全性の欠如と孤立
職場に「自分の居場所がない」と感じる段階です。相談できる相手がいなかったり、ミスをすると過剰に責められたりする環境では、心理的安全性が保てません。「ここで長く働くイメージ」が持てなくなり、孤立感が深まります。こうなると、あとは時間の問題です。ちょっとしたきっかけが離職に繋がります。
衛生要因と動機づけ要因の罠
多くの企業が、給与アップや休日増加などの「衛生要因(不満足を解消する要因)」の改善に注力します。
しかし、衛生要因を満たすだけでは満足度は上がりません。不満はゼロになっても、「もっと働きたい」という意欲にはつながらないのです。
「動機づけ要因(やりがい、承認、成長実感)」が満たされなければ、より良い条件の会社が現れた瞬間に転職されてしまいます。離職を防ぐには、条件面の改善だけでなく、「ここで働く意味」の醸成が不可欠です。
離職率が高いことによる経営損失
離職率が高い状態を放置すると、経営に甚大なダメージを与えます。その損失は、目に見えるコスト以上に深刻です。

採用コストと教育コストの損失額
欠員補充のための採用活動には多額の費用がかかります。
- 求人広告費: 媒体掲載料やスカウトメール送信費
- 人材紹介手数料: 年収の30〜35%が相場
- 教育コスト: 入社研修費やOJT担当者の人件費
例えば、年収400万円の社員が1名離職し、エージェント経由で補充した場合、紹介手数料だけで約120〜140万円のキャッシュアウトが発生します。さらに、戦力化するまでの給与も含めれば、損失額は数百万単位に膨れ上がります。
組織への悪影響と負のスパイラル
金銭的なコスト以上に怖いのが、組織への悪影響です。
- ノウハウの流出: 暗黙知として蓄積されたスキルや顧客関係が失われます。
- 残存社員の疲弊: 欠員の穴埋めで残業が増え、連鎖退職のリスクが高まります。
- 企業ブランドの毀損: 転職口コミサイトなどで「人がすぐ辞める会社」という評判が広がると、採用難易度が上がり、採用単価が高騰する悪循環に陥ります。
離職率を改善する具体的施策と「リファラル採用」の有効性
離職率を適正範囲にコントロールし、定着率を高めるための具体的な打ち手をご紹介します。対策は「採用段階」と「定着段階」のフェーズごとに打つ必要があります。
フェーズ1:採用時のミスマッチ解消
入り口でのズレをなくすことが、最も低コストで効果的な対策です。
- RJP(Realistic Job Preview)の実践:
「現実的な仕事情報の事前開示」を行います。良いことばかりを伝えるのではなく、大変なこと、厳しい側面も面接段階で正直に伝えます。覚悟を持って入社した社員は、困難に直面しても折れにくくなります。 - ペルソナの明確化:
「優秀な人」という曖昧な定義ではなく、自社のカルチャーに合い、自社の課題を楽しめる人物像を具体化します。スキル要件だけでなく、価値観の一致を重視します。
フェーズ2:オンボーディングと定着支援
入社直後は最も不安が高まる時期です。
組織になじむまでの手厚いサポート(オンボーディング)が定着の鍵を握ります。
- メンター制度の導入: 直属の上司とは別に、斜めの関係の先輩社員を相談役としてつけ、孤立を防ぎます。
- 1on1ミーティングの定着: 業務進捗確認ではなく、「対話」をする時間を設けます。現在のコンディションやキャリアの悩みを共有することで、信頼関係を築きます。
最強の離職防止策「リファラル採用」
最も有効な手段の1つが、「リファラル採用」 です。
リファラル採用は単なる「採用手法」ではなく、最強の「離職防止策」でもあります。
情報の非対称性の解消
リファラル採用では、求人票には書かれないような「職場の雰囲気」「上司の性格」「残業の実態」などを、友人である社員から事前に聞いています。そのため、「聞いていた話と違う」という入社後のギャップ=リアリティ・ショックが極限まで少なくなります。
入社前から会社のリアルを知っているため、定着率が高くなるのです。
「類は友を呼ぶ」マッチング精度
紹介する社員は、自社のことも友人のこともよく知っています。「この会社なら彼が活躍できる」「彼女ならウチの文化に合う」というフィルタリングが自然に行われます。スキルだけでなく、カルチャーフィットの精度が格段に高まるため、早期離職のリスクが大幅に軽減されます。
また、入社後も「紹介してくれた友人がいる」という安心感が心理的安全性を生み、スムーズな組織適応を促します。
これは他の採用経路にはない強力なメリットです。
リファラル採用の詳細については以下の記事をご覧ください。
関連記事:リファラル採用とは? 基本的な仕組みからメリット・デメリット、事例までを解説
リファラル採用で離職率改善に成功した企業事例
実際に離職率の課題に向き合い、劇的な改善を果たした企業の事例を紹介します。共通しているのは、制度を入れるだけでなく「風土」を変えた点です。
株式会社SmartHRの事例
リファラル経由での応募が他チャネルの10倍以上の内定率に
急成長するSaaS企業・SmartHRでは、社員が自発的に採用に関わる文化が根付いています。
- 課題: 組織の急拡大に伴うカルチャーの希薄化と採用効率の維持。
- 施策:
会社が会食費を負担する「リファラルごはん」制度や、紹介者への感謝を示す「いい人紹介ありがとう制度」などを導入しました。
また、不採用時にも関係性を維持するための「ごめんねごはん」など、ユニークな制度設計を行っています。 - 成果:
従業員の約30%がリファラル採用経由となり、高いカルチャーマッチを実現しました。
選考通過率は他のチャネルの10倍以上となり、組織拡大期においても「文化の希薄化による離職」を防いでいます。
株式会社セールスフォース・ドットコムの事例
年間採用の約半数をリファラルで実現し、生産性向上へ
グローバルIT企業のセールスフォースでは、リファラル採用を企業の成長エンジンと位置づけています。
- 施策:
社内ツールでのポジション告知や、ビジネスリーダーを巻き込んだ全社的な啓蒙活動を実施しました。
カジュアル面談を設けて紹介ハードルを下げる工夫も行っています。 - 成果:
内定者の半数以上がリファラル経由となっています。
入社後のギャップが少ないため離職率が低く、即戦力として高い生産性を発揮しています。
株式会社串カツ田中ホールディングスの事例
離職率37%の危機からの脱却
離職率が高い傾向にある飲食業界ですが、串カツ田中ホールディングスでは離職率が37%とひときわ高い状況にありました。
- 課題:
人材紹介会で採用人数は増える一方、採用コストの高騰と離職率の悪化が課題に。 - 施策:
経営を含めた全社でリファラル採用を推進しました。リファラル採用制度を全社会議の場で説明し、全社員に対して現状の課題感、採用に費やしている金額や離職率について全てオープンに伝えました。これが効果的だったと思います。 - 成果:
30%を超えていた離職率が、劇的に下がりました。リファラル採用で入社した社員は、会社のこともよく知っていますし、仕事も好きなことが多いので定着してくれています。
関連記事:リファラル採用の成功事例15選|大手や中小企業の導入実績を紹介
適切なサイクルとリファラル採用で離職率を改善へ
離職率が高いという事実は、経営者や人事にとって耳の痛い話かもしれません。
しかし、それは組織が抱える課題を可視化してくれる貴重なシグナルでもあります。
数値を改善するために必要なのは、小手先の福利厚生追加や給与アップだけではありません。
「なぜ、社員はこの会社で働くのか」という問いに対し、企業が明確なメッセージと環境を用意できるかどうかが問われています。
- 現状を正しく把握する: まずは自社の数字を直視する
- 心理的安全性のある職場をつくる: 1on1などを通じて孤立を防ぐ
- 価値観の合う仲間を集める: リファラル採用などマッチング精度の高い採用手法を取り入れる
このサイクルを回すことで、組織は「辞めない会社」から「選ばれ続ける会社」へと進化します。
離職率対策にも有効な「リファラル採用」のノウハウに興味のある方は、こちらもご覧ください。

