このインタビューは、“社員にとって紹介したい会社作り” “本質的な採用における取り組み”を積極的に行う企業様を表彰対象とした『Referral Recruiting Award 2024』の受賞企業様へ、その取り組みをお聞きするシリーズです。

今回ベンチャー部門で受賞したカバー株式会社は、VTuberプロダクション「ホロライブプロダクション」を運営し、メタバースやエンターテインメント事業を展開。自然発生的なリファラル文化を戦略的にレベルアップさせ、リファラル採用決定数が上期から下期にかけて約1.5倍に増加するなど、大きな成果を上げた点が高く評価されました。

  • リファラル施策発展への道のり
  • アップデートした施策の内容
  • リファラル採用の今後の展望

などを中心に、取り組みについてお話をお伺いしました。

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インタビュイー

坂本 香菜子 氏: 採用担当。2021年9月入社。それまで自然発生的だったリファラル採用を体系化し、戦略的な取り組みとして推進。

代表のアクションから始まった自然発生的リファラル文化

―― リファラル採用に取り組まれた経緯について教えてください。いつ頃から始められたのでしょうか?

坂本: 当社のリファラル採用は“ベンチャーあるある”かもしれませんが、私が入社した当初は特に制度として強く確立されていたわけではなく、代表の谷郷やコアメンバーを中心に友人や知人をラフに紹介していました。「リファラルを積極的にやろう」と言っていた気配もないので、自然と知り合いが多かったんでしょうね。面白いのは、代表の直接の友人というより、「転職活動している人がいるけど興味ある?」みたいな形で、周囲から代表が紹介してもらうケースも多かったことです。

制度のアップデートで加速したリファラル採用

―― その後、リファラル制度はどのように発展してきたのでしょうか?

坂本: リファラル制度は最初はかなりシンプルで、報奨金も10万円程度でした。当時リファラル採用の説明会も2〜3回ほど実施しましたが、全社会ではなく「任意で聞きたい人来てください」という形であったため、参加者は5〜6人程度と少なかったですね。ただ、それでもちらほらリファラルで入る人はいたので、説明会の結果急に増えたわけでもなく、やる前に減っていたわけでもなかったという状況でした。

しかし、時間の経過とともに少し熱が冷めてきた感じはありました。そこで昨年に制度を新しくして、現在の報奨金は一般社員で20万円、エンジニア職は50万円という設定です。この変更によってまた紹介数が増えた印象です。さらにリフカムさんと一緒に取り組みを始めてからはかなり増えています。発信することと制度を変えたことで紹介が増えたなと感じますね。

―― 金額設定について少し触れられましたが、これからリファラル制度を導入するお客様と話す中で、適切な金額についてよく質問を受けます。金額の引き上げ効果はいかがでしたか?

坂本: 効果はあると思います。特にエンジニアの紹介は以前はほとんどなかったのですが、50万円に設定したことで増えた印象があります。劇的に増えたわけではないかもしれませんが、紹介しようと思うきっかけにはなると思います。少ないところから増額となると、単純にインパクトがありますからね。一方で、過去にリファラルキャンペーンをやった経験では、募集難易度が高い職種をターゲットにしてもあまり効果はありませんでした。金額を上げたところで候補者が少ない職種は紹介も少ないので、限界があります。そういう意味では、全体の金額を上げた方がベースは上がるのではないかと思います。

金額設定の考え方としては、採用単価に依ると思います。前職でも当社でも採用エージェントに結構頼っていたので、「エージェントに払うなら社員に払いたい」という考え方でした。エージェントを経由すると単価で150万円かそれ以上かかることもあるので、50万円でも十分コスト的に合理的だと考えています。エージェント採用にあまりコストをかけない会社であれば、5万円や10万円という設定もあり得るでしょう。

―― 報奨金をめぐってトラブルなどはありませんか?例えば、友人を紹介している時点では、入社が決まると紹介者がお金をもらえることを友人は知らないケースもあると思いますが。

坂本: 私の知る限りではトラブルになったことはないですね。採用チームとしても聞いたことがありません。人によると思いますが、報奨金を紹介者と入社者で折半するケースや報奨金で高級な食事をご馳走するといった対応をしたりしますね。

基本的には大きな問題なく進んでいます。おそらく入社された方は「紹介してくれてありがとう」と思っていて、お金のことはあまり気にしていないのではないでしょうか。

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段階的に整備された採用戦略とリファラルの位置づけ

―― リファラル採用の経緯や現在の取り組みについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

坂本: 当社の採用戦略は段階的に進化してきました。私が入社した3年前は採用担当未経験者がチーム内のほとんどで、それに加え応募数が月間で600件ほどと非常に多かったため、対応が滞りがちでした。そこで1年目は応募者への対応をスピーディーにすることや、エージェントとの丁寧な関係構築に注力しました。

2年目は自社での採用活動を強化するために、ダイレクトリクルーティングを本格化させました。スカウト送信数などのKPIを設定して取り組んだのが2023年度です。当初はそこまで決定数が多くなかったものの、現在はコンスタントに採用できるようになりました。

そして今期後半からは、安定してきた採用経路に加えて次の柱としてリファラル採用の強化に取り組んでいます。採用経路の偏りをなくすという観点から、「自然流入」「エージェント」「ダイレクトリクルーティング」「リファラル」と、一つひとつ確立させてきた形です。

リファラルはこれまで社員の自発的な協力で成り立っていた面が大きく、再現性が低いものでした。それを戦略的に取り組むことで、安定した採用経路にしていきたいと考えています。

―― その順番は今振り返っても正しかったと感じますか?

坂本: そうですね。採用の力をつけるという点では、まずは業務を整理して余力を作ることが必要でした。応募者対応を効率化し、面接にすべて出ていた状態から徐々に現場に任せられるところは任せるようにした結果、採用チームの残業時間は半分ほどになり、スカウト活動などの攻めの採用にも取り組めるようになりました。

特に重要だったのは、“今がチャンス”という認識です。会社が落ち目になってから始めても、リファラル文化は定着しません。上昇局面でみんなが会社に誇りを持っている時、成長していると感じている時に、リファラル採用を当たり前にしておく必要があります。会社の調子が悪い時期にいくら取り組んでも、社員が自信を持って紹介できなければ意味がないので、このタイミングが重要だと考えました。

メモリーパレスで社員を巻き込み、タレントプールを拡充

―― 人事部門としての工夫や取り組みについて教えてください。制度の周知や社員の巻き込みはどのように行われていますか?

坂本: Slackで月に1回の発信や、全社会での制度変更の説明、タレントプール(候補者データベース)の説明といった基本的な周知活動を行っています。また、管理職向けのワークショップや説明会も実施しました。

特にインパクトがあったのは制度変更です。金額アップに加えて、紹介対象も広げました。この制度アップデートと一緒に認知度を高められたのが良かったと思います。ただ単に「リファラルお願いします」と声をかけても、「知ってるよ」という反応になりがちですが、制度アップデートをセットで告知できたことが効果的でした。

運用面では、社員が候補者情報をシステムに入力してくれたら、翌営業日には必ず担当者が連絡するようにしています。カジュアル面談にするか正式選考に進むか相談したり、書類選考は免除するといった対応も行っています。また、選考過程や結果については紹介者にもしっかり共有するよう心がけています。

最近始めたことの一つとして、入社時のオリエンテーションでリファラル制度の説明を組み込むようにしました。これは昨年12月からの取り組みです。

―― メモリーパレス(候補者の発掘ワークショップ)も効果があったとのことですが、いかがでしたか?

坂本: メモリーパレスは非常に良かったと思います。実施以降、今でも週に2〜3件は登録が続いていて、これは予想以上の成果でした。

メモリーパレスが良かった理由は、リファラル採用を活性化するために社員と一緒に具体的にできる数少ない取り組みだということです。基本的には周知して待つしかないのですが、メモリーパレスでは社員と直接関わりながら候補者を発掘できます。自分たちで取り組みを“やっている感”があるのも良いですし、どう改善すべきかも明確になります。アンケートを取るよりも直接肌で感じられますし、終わった後に次のアクションや改善点を明確にしやすい施策だと思いました。

―― これまでの取り組みの成果はいかがでしょうか?

坂本: かなりの成果が出ています。4月入社から9月入社までの上期のリファラル採用は18人でしたが、10月以降の下期は24人と増えています。これは制度変更とリフカムとの取り組みの効果だと感じています。

特徴的なのは、以前は特定の社員から紹介が集中する傾向がありましたが、最近は満遍なく様々な社員から紹介が来るようになったことです。制度変更からこのパターンに変わってきました。

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リファラルはエンゲージメントのバロメーター

―― 今後の展望について教えてください。リファラル採用をどのように発展させていきたいと考えていますか?

坂本: 私は、リファラル採用と会社のエンゲージメントはほぼイコールだと考えています。エンゲージメントが高まれば高まるほど、リファラルも活性化すると思います。リファラルの状況を見ることで会社の健全性を測れるバロメーターにもなります。アンケート調査の中で「今は紹介できません」と回答した社員も数名いましたが、こういった声も含めて、社員がどう感じているかを知る貴重な機会だと捉えています。

最終的には、社員の皆さんが大事な人に自信を持って紹介できる会社であり続けたいと思っています。採用のテクニックだけではどうにもならず、会社そのものの魅力が問われるのがリファラル採用の本質だと感じています。リファラル採用が成功するということは、会社が健全に成長しているということ。社員が会社を誇りに思い、友人や知人に「ここで一緒に働こう」と声をかけられる状態を維持することが、最も重要だと考えています。

メモリーパレスのような取り組みをもっと広げ、各部門で自走できるようになれば理想的です。一緒にワークショップを実施して成功体験を積む社員が増えることで、自分たちで候補者を発掘できる文化が根付いていくと良いですね。

―― 本日は貴重なお話をありがとうございました!最後に一言いただけますか?

坂本: 今回のインタビューを通じて改めて振り返ると、「これをやったから良かった」という特効薬的な施策はなく、基本に忠実に取り組んだ結果が今の成果につながっていると感じました。

何より大事なのは、社員が「この会社で働くことに誇りを持てる」タイミングでリファラル文化を根付かせること。私たちが良かったのは、会社の成長期に取り組みを強化できたことだと思います。

cover 1 カスタマーサクセス担当の小山(右端)も加わり記念撮影。