第2回受賞企業インタビュー
株式会社VSN

「人が人を呼ぶ採用」を採用ビジョンに掲げ、社員が採用を楽しめるように

当インタビューは、「社員にとって紹介したい会社作り」「本質的な採用における取り組み」を積極的に行う企業様を表彰対象とした「Referral Recruiting AWARD 2018」の受賞企業様への取り組みをお聞きするシリーズです。

エンジニアの技術提供やコンサルティングを手がける株式会社VSNでは、かねてより社内に制度として存在したリファラル採用を定着させるために数々の施策を行っています。しかも、それらのほとんどが一人の採用担当者の手によって行われ、現在では社員の約30%がリファラル採用に協力的になり、年間30人ほどのエンジニアがリファラル採用で入社しています。今回は、株式会社VSNにおけるリファラル採用の仕掛け人である人事本部の國司さんに、具体的な施策の内容や、リファラル採用が社員の皆さんに与えた影響などを伺いました。

元お笑い芸人が仕掛けるリファラル採用定着のための施策

___御社がリファラル採用を本格化させたのは、どのような経緯があったのでしょうか。

僕はずっと営業をやっていて、2015年1月から採用担当に異動しました。なぜ異動を希望したかというと、営業をしていく中で、「ITエンジニアが不足しているために顧客の要望に応えきれない」という状況に何度も遭遇したからです。これを解決するために、営業のノウハウを活かして採用担当として会社を売り込み、エンジニアを採用していきたいと考え、希望を出して採用に異動しました。

その時点で社内にリファラル、当社では社員紹介と呼んでいる制度はあったのですが、あまり盛り上がっておらず、社員紹介で入社する人は年間5人くらいという状況でした。そこでやはりこれからは社員紹介を活発にしようということになり、上長が「お前がリファラルを推進してこい」と言ってくれました。

___國司さんがリファラル担当に選ばれたのは何か理由があったのでしょうか?

おそらく営業出身だったということと、僕がお笑いコンビ「ハライチ」の3人目だったということもあると思います。中学生の頃に、彼らとお笑い芸人になろうという話をしていて、高校の頃に脱退しているのでプロの芸人としては活動していないんですが、未だに「ハライチ幻の3人目」とテレビ番組に呼んでくれるんです。小さい頃から人前に出るのは全然苦ではなく、テンションが上がる人間だったので、そういうところを見られていて、任せてくれたのではないかと思います。

___そこからお一人で、どんな施策を行ったのですか?

マーケティング用語にAIDASという商品購入のプロセスを表す言葉があります。Attention(注意)・Interest(関心)・Desire(欲求)・Action(行動)・Satisfaction(満足)のことなのですが、その通りに進めていきました。まずは認知をしてもらい、行動してもらい、そして「紹介してよかったな」と満足してもらい、社員に社員紹介のファンになってもらえるよう取り組んでいきました。

まずは、社員紹介を認知してもらわなければいけないので、社内SNSのChatter(チャター)に面白い投稿をしました。

「広告の3B」という、注目され好感を持たれる要素としてBeauty(美人)・Beast(動物)・Baby(赤ちゃん)というものがありますよね。それにプラスして「ビッグネーム」と「ボケ」を入れて僕は「広告の5B」と呼んでいますが、それらの要素が入ったテキストや写真をChatterに投稿をして「いいね!」やコメントをもらい、「國司が社員紹介を始めた」というメッセージを伝えていきました。

あとはちょうど中期経営計画発表会という全社員が集まる機会があったので、そこでも社員紹介について話して笑いをとったり、それ以外のエンジニアのミーティングや部会などの社内の集まりには全部出て、社員紹介の話をさせてもらったりしました。

2015年の年末には「紹介カード」を作りました。このカードにはQRコードが記載されていて、読み込むと採用担当に連絡ができたり、選考基準が見られたりします。このカードは全社員に配布しました。

とはいえ、紹介カードを作って配り、おしまいではありません。これは「紹介カードマン」をやるための布石です(笑)。某クレジットカードのCMの完全なパロディなんですが、2015年の年末に行われた色々な忘年会でこの格好をして、CMソングの替え歌を歌いながら登場し、偉い人と写真をとってチャターにアップしました。そんな戦略で社員紹介を広めていったところ、だんだん社員紹介が増えてきました。

___國司さんの思い出に残っている、社員紹介のための施策は何ですか?

やはり「紹介カードマンズ」です。紹介カードマンの元ネタのあのCMは、5人組なんですよ。これをリーダーが集まる合宿で本部長たちにやってもらいました。

紹介カードマンが1人ずつ出てきて社員紹介について語ってもらう。その後に『ドラゴンボール』のフリーザが出てきて、紹介カードマンズがフリーザに攻撃されてしまう。そうしたら孫悟空の格好をした役員が出てきて、孫悟空とフリーザが戦う。それを僕はずっと実況していました。最終的にフリーザを倒して盛り上がり、「社員紹介お願いします」と。これによって、本部長クラスがリーダーたちに社員紹介について発信したということが大きかったようで、「もっと社員紹介をやろうよ」という雰囲気が高まりました。このことが評価されて、社内表彰式で個人賞を受賞しました。

紹介可能な件数が1年で約10倍に

___2015年の1年間で様々な施策を行った結果、どのような変化がありましたか?

社員から「紹介できるよ」と言われた件数は1年で約10倍になりました。それまでは1年で約10人の紹介があって約5人が入社していたところが、月に約10件、1年に120〜130件くらいの紹介がくるようになりました。そこから約30人が1年で入社するようなったので、当社の社員紹介に関するデータがかなり蓄積されました。

そこからデータ分析をして、当社の社員紹介の傾向が分かるようになりました。例えば紹介は中途入社の方が多いとか、入社3年以内に紹介をしているとか、僕と面識がある人からは紹介数が多い傾向にあるとか。

そこで、この結果を反映した施策を新たに行いました。一例をあげると、中途入社の方へのオリエンテーションで社員紹介のことを伝えてアンケートをとり、この時点で「紹介できる」と答えてくれた方にすぐに連絡してもらうというのが、非常に入社につながる手応えがあります。

あとは、紹介してもらってもすぐに入社には至らないという方が結構たくさんいて、その方々がタレントプール化されています。この中には、外国籍で今は日本語能力がビジネスをするにはちょっと厳しいという人がいます。この人について、僕のエクセルのタスク表には「2020年に会いたい」と書いてあります。だからその人には2020年に連絡するんです。

また、この間も、2017年頃に一度面接に来ていただいてお見送りになってしまった方がいたのですが、採用基準が変わったことでチャンスが出てきましたので、久しぶりに連絡を取りました。結果として内定となって今年の夏ごろに入社が決まりました。このようなこともタレントプール化されていれば可能になりますので、どんどん蓄積していきたいですね。

___紹介された方の管理はエクセルで、しかもお一人で行っているんですね。大変ではないですか?

僕は、タスク管理はエクセルでやります。確かにタスクはどんどん増えて、工数は色々かかりますが、それでも社員紹介の管理に関しては1日30分〜1時間の工数で行っていますので、できないわけがないと思います。時間を決めて電話したり、ショートメールを送ったりすればいいだけですし。

___ちなみに、社員の方にはどのようなメッセージを伝えて、社員紹介をお願いしているのでしょうか。

「紹介したい人には、まずは会社の話をざっくばらんにさせてもらうので、誘ってみて」と伝えています。選考ではなくて、まずは来てほしいと。

実際に会ってみると、転職意向が高い人もいますし、まだ一応話を聞いてみたいだけという人もいます。でも、会って話して見ると意外と転職したいということで、半年以内に入社することもあります。なので「まずは会わせてください」と伝えて会っています。

___それ以降はどんなプロセスなのでしょうか。

面談は、関東で行うものは僕が全て担当し、西日本はもう1名の社員に任せています。

紹介が来たら電話をして会い、お話をして、その後は紹介してくれた社員に進捗を共有しています。「前向きに検討していただくことになりました」「面接の日程が決まりました」と、その都度ショートメールを送ります。選考中は社員と候補者と並走しているような感じです。

多少手間はかかりますが、これをすることによって社員とどんどん仲がよくなっていくんです。そして候補者が実際に入社になったら、また紹介してくれるし、残念だったとしてももう一回紹介してくれるんですよね。社員紹介のファンになってくれているんだと感じます。

リファラル採用の真髄は、「直接社員に伝えること」

___今後の展望やビジョンを教えてください。

当社はアデコグループの一企業なのですが、アデコグループには「キャリア開発があたりまえの世の中をつくる」というビジョンがあります。日本全国どこでも、どんな職種の方でもキャリア開発をしていけるような世の中にするというものです。なので、僕自身も業務のフィールドを広げて、日本全国のエンジニアやそれ以外の職種の方々の雇用を推進していける立場になりたいと考えています。

その立場ではリファラル採用のノウハウは絶対に役に立っていくと思いますし、これは自分の武器でもあるので、まずは引き続き社員紹介を推進していきたいです。

具体的なところでいうと、より事業部を巻き込んで、事業部と連携して社員紹介ができればいいなと考えています。最終的には紹介したい人が連絡先だけ教えれば、あとは事業部と採用担当で進められるというのがベストだと思います。

___採用担当の方、これからリファラル採用をやろうと考えている方、リファラル採用をしたいけど何をしたらよいか分からないという方へのメッセージをお願いします。

リファラル採用は「直接社員に伝えること」が真髄なので、まずは動くことが大切だと思いますね。何をしたらよいか分からない場合は、何をしてもいいと思います。

とにかく伝える、「社員紹介をお願いします」と言うことが大事です。ノウハウはWebで調べれば色々と出てくるので、どんどん真似しましょう。僕もかなり真似しています。「真似で何が悪い」くらいの感じで(笑)、どんどん動く。

リファラル採用を行うには、行動していないことの方がよくないと思いますので、まずは動きましょうと伝えたいですね。

___國司さんはお一人でリファラル採用の業務の大半をこなされているということなので、今回のお話は、タスク管理やタレントプール管理などの点がスタートアップや中小企業の方にも参考になったのではないかと思います。興味深いお話をありがとうございました。