このインタビューは、“社員にとって紹介したい会社作り” “本質的な採用における取り組み”を積極的に行う企業様を表彰対象とした『Referral Recruiting Award 2024』の受賞企業様へ、その取り組みをお聞きするシリーズです。
今回ベンチャー部門で受賞したシェアフル株式会社は、オンデマンドマッチングプラットフォームや人材紹介サービスを提供する2019年設立の成長企業です。今回、リファラル採用の文化醸成と採用効率を段階的に両立させ、下期採用決定の25%以上をリファラルで達成するなど、高い実績を上げたことが評価され表彰されました。
- リファラル採用を始めたきっかけと定着までの取り組み
- “直接アタック型”施策への戦略転換プロセス
- 社員主体のリファラル文化構築に向けた課題と今後の展望
などを中心に、具体的な取り組みについてお話をお伺いしました。
インタビュイー
盛安 裕貴 氏: 人事部人材開発室
船江 りさ子 氏: 人事部人材開発室
自然発生的な紹介文化を戦略的に育てる――リファラル採用の始まり
―― まずはリファラル採用を始めたきっかけを教えてください。
盛安: 私が入社する以前から自然と紹介の文化はあったのですが、プロジェクトとして取り組んでいたわけではなく、あくまで社員からの自然発生的な紹介という形で進んでいました。会社の成長を目指す中で、そういった紹介の文化の火種をより燃やしていくことで活性化できると感じ、代表の横井とも話し合ったり、リフカムさんのノウハウを学びながらリファラル採用を制度として本格的に取り入れることに決めました。
―― 現在のチーム体制はどのようになっていますか?
盛安: 採用チームは私と船江ともう1名の3名で構成しています。この中でリファラル採用をプロジェクト化し、船江がオーナーとなって推進しています。
―― 当初のリファラル採用における課題は何でしたか?
盛安: 二つありました。一つは先ほども話したように、文化として紹介が自然発生していたのでそもそも施策や課題として取り組んでいる状態ではなかったこと。もう一つは“なぜリファラルが上手くいかないのか”という本質的な問題です。
おそらく、多くの人は「どうしたらいいのか分からない」と感じているんじゃないかと。会社に紹介したい気持ちはあっても、プロセスの煩わしさや誰を紹介すればいいかわからないといった障壁があるんです。「会社に紹介したい」か「したくない」かという違いはありますが、「したくない」という人を「したい」に変えるのはリファラル採用の取り組みというよりは、会社全体のエンゲージメントの問題だと考えています。「したい」と思っているのに紹介に至らない理由を解消することが重要だったんです。
文化醸成から直接アタックへ――段階的に進化するリファラル戦略
―― どのようにその課題を解決していったのですか?
盛安: 最初は“煩わしさを無くす”ことからスタートしました。Refcomeを導入して、とにかく簡単に登録してもらうことをゴールにしました。目標も、採用決定数ではなく候補者登録数に設定しましたね。
新入社員向けのオンボーディングでリファラル採用について説明したり、登録のハードルを下げる工夫をした結果、半年くらいで登録数がぐっと増えて、それに伴い決定も出始めたんです。そのおかげで、リファラル採用を加速させる流れができました。
―― 施策としてリファラルを始めた際、社員の方々はどのような反応でしたか?
盛安: いきなりSlackで「リファラル採用をお願いします」と言うのではなく、最初に全員を集めて説明したので反発はなかったですね。少なくとも全員が話を聞いてくれる状態は作れたと思います。その中でアンケートも取って分かったのですが、リファラル採用自体を悪と捉えてネガティブに考えている人はいないんですよ。なので、あとはこちら次第だと思っていました。
―― その後、戦略に変化はありましたか?
盛安: はい。会社として去年4月から9月にかけて採用活動を強化していく中で、採用のボリュームを調整し、採用単価を意識すべきフェーズに入りました。エージェントからの採用を抑え、リファラルによってさらに決定に直接結びつける動きを去年10月から始めています。
それまでは職種を問わず網羅的にリファラル経路を増やすイメージでしたが、現在は空いているポジションに着実に採用をつなげていく“直接アタック型”の施策に力を入れています。今は船江と一緒に、より決定を意識した取り組みを進めています。
効果が見えにくいイベントはあまり今の採用チームには向いていないと思っています。ピザパーティーのようなイベントから決定に至っている会社さんはすごいと思いますが、私たちは 網羅的に集客するよりも、具体的で効果の見える取り組みを心がけています。
―― 他社ではリファラル文化醸成と採用数の両立に苦労しているケースが多いですが、シェアフルさんはバランス良く進められている印象です。
盛安: そうですね。最初に社内浸透させて土壌を作ったことで、直接アタック型の施策も効果的に展開できていると思います。文化醸成と採用効率、どちらかに偏るのではなく、段階的に両方を大切にしてきました。
―― 結果的に採用成果はどうなりましたか?
盛安: 下期の決定数の25%以上がリファラル採用で、グループ内のスカウト制度を除けば最大の採用チャネルになっています。エージェント経由の利用を抑えている面もありますが、それを考慮してもリファラルからの採用が最も多いんです。
当社の強みは、幅広く募集していることだと思います。スタートアップは少数精鋭で特定のポジションをピンポイントで採用するケースが多いですが、当社は上期だけでも200人ほど増員するなど、規模が大きい。様々なポジションがあり、経験不問の職種もあるため、適切な職種へのマッチングが創出しやすいという利点があります。
メモリーパレスと前職リスト――効果的な直接アタック施策
―― 具体的な施策について詳しく教えてください。特に“メモリーパレス”ではどんなことをされていますか?
盛安: 特定の職種に合った人材の繋がりが多そうな社員の方に声かけを実施し、候補者をリストアップしてもらっていて、特にエンジニア採用などでは効果的です。エンジニアはプロダクト部門の人、特にPdM(プロダクトマネージャー)からの紹介が多い傾向があります。
また、直接アタックを効率的に行うために、船江に前職リストを作成してもらいました。前職の人脈から、必要なポジションに合った人材の繋がりが多いと思われる親和性の高い経験をしてきている社員をリストで特定し、メモリーパレスに招待するという流れです。
―― メモリーパレスの雰囲気はどんな感じですか?
船江: 全体的に協力的な雰囲気ですが、中でも特にポジションについてたくさん質問してくれる人がいたり、積極的にリファラルを進めようとしてくれる人が多い印象です。
盛安: “こんなに会社が盛り上がっているんだ”ということを全体に見せることが大切だと考えています。ネタがなくても、何かしらネタを作り発信するという姿勢で取り組んでいます。HR部門だけが前面に出るのではなく、職種紹介などは現場の人に協力してもらったり、メモリーパレスも事業責任者に参加してもらうなど、会社全体で取り組む姿勢を見せています。
―― 現場の事業責任者に協力してもらう際の工夫は?
船江: 忙しい方々の負担を減らすため、こちらでポジションについてなどの質問を用意して10〜15分程度のインタビュー形式にするなど、工数を減らす工夫をしています。
―― 紹介者や候補者へのフォローはどのようにされていますか?
船江: 内定承諾までの声かけは丁寧に行うことを心がけています。現場とも連携しながら進めています。
盛安: 紹介者を巻き込むことが重要だと考えています。どの会社でもやっていると思いますが、 紹介してくれた社員と連携しながら候補者をフォローすることで、実際に内定承諾率も高くなっています。
社員主体のリファラル文化を目指して――今後の展望と課題
―― 現在の課題と今後の展望を教えてください。
盛安: 現在の課題は、Refcomeに登録してくれた候補者に社員が声かけしてくれる率が若干低いことです。“登録のための登録”になりすぎている面があります。候補者の転職への温度感がわからなくても登録してもらう方針でやってきたので、この状況は想定内ではあるのですが、次のステップとしては継続的なアプローチを促進したいと考えています。
転職したばかりの人でも声をかけるだけのことはできるはずなので、どうやってその一歩を促すか。一カ月で状況が変わる人もいるでしょうし、何かきっかけが必要だと思っています。
―― 長期的にはどのような状態を目指していますか?
盛安: HR部門からの施策ではなくなればいいなと思っています。もちろん今後も施策は継続していく必要がありますが、施策すらやらなくていい、“何も取り組みをしなくても紹介がある”状態が理想です。
例えば、採用決定の連絡をHR側からではなく、紹介した本人から行うとか。他の社員がリファラルを推進している状態が理想的で、現場主体の仕組みにしたいんです。目標数値のような指標がない世界まで持っていけるといいなと思います。つまり、紹介があるのが当たり前の世界です。数値目標がある限り、どこまでいっても“文化”とは言えないと思います。極論かもしれませんが、そういう状態を目指しています。
船江: 人事側ではなく社員側からの発信や相談が増えることが、文化として定着している証**だと思います。大きな目標としてそれを目指していきたいです。小さな一歩としては、Refcomeに登録した後の進捗を社員側からも自然に追えるようにするなど、社員が主体的に関われる仕組みづくりを進めていきたいと考えています。
リフカム カスタマーサクセス担当の小山(右端)も加わり記念撮影。