このインタビューは、“社員にとって紹介したい会社作り” “本質的な採用における取り組み”を積極的に行う企業様を表彰対象とした『Referral Recruiting Award 2024』の受賞企業様へ、その取り組みをお聞きするシリーズです。

今回エンタープライズ部門で受賞した三菱電機ビルソリューションズ株式会社は、全国280拠点の事業所を配置し、エレベーターやエスカレーターなどのビル設備の製造から施工・メンテナンスまでを一貫して行い、社会インフラを支える事業を展開しています。今回、“シンプルさを追求した制度設計”と“現場目線に立った社内浸透施策”が高く評価され表彰されました。

  • リファラル採用を始めたきっかけと推進体制
  • 現場社員が使いやすい制度設計の工夫
  • 全国の事業所への浸透施策と具体的成果
  • 今後の展望と課題

などを中心に、具体的な取り組みについてお話をお伺いしました。

meltec 1

インタビュイー

高橋 眞実 氏: 本社総務人事部採用グループ。経験者採用・グループ会社採用強化の専任として半年前からリファラル採用を担当。全社統括の立場でリファラル採用活動を推進。 古川 祐愛 氏: 採用グループに配属されて1年目。経験者採用と新卒採用を両方担当し、リファラル採用では主に広報活動を推進。

経験者採用の新たな柱としてリファラルに注目

―― 貴社がリファラル採用を始められた、または注力されたきっかけとなったのはどのようなことからでしょうか?

高橋: まず新卒市場において、少子化に伴い、理工系学生や工業高校生が減少しているという背景があります。当社はエンジニアによるメンテナンスの事業が大きな柱の一つであり、人員確保が売上に直結するため、経営課題として非常に重要です。これまでは人材紹介やダイレクトリクルーティングを中心に経験者採用を行ってきましたが、新しいチャネルを構築したいと考えました。実は各支社では以前から地道に草の根的なリファラル活動を行っていたのですが、今回それを全社的な新しい採用の柱にしたいということで本社が着目したのです。

―― 制度としては今回が初めての導入だったのでしょうか?

高橋: そうですね。これまで各支社で独自に行っていた活動を、全社的な制度として設計・再構築 しました。

社員目線で設計された“シンプル”なリファラル制度

―― 現在、どのような制度や取り組みを実施されていますか?

高橋: 2024年11月1日からリファラル採用を正式に導入しました。事前準備として、リファラル紹介カードを作成し、全国280か所の事業所に送付しました。また、イントラネット上に専用サイトを立ち上げ、リファラル採用についてや具体的な進め方をわかりやすく紹介する動画などを掲載。加えて、全社員1万3,000人に向けてリファラル採用導入のお知らせメールを一斉配信しました。

2ヶ月目には社内の紙の広報誌に記事を掲載し、3~4ヶ月目にはリファラル採用で入社した方々の事例・インタビュー記事をポータルサイトにアップしています。また、報奨金制度も導入し、併せて規程を制定することで制度を明確化しました。

―― 特に効果的だった施策はどのようなものでしょうか?

高橋: Refcomeで構築したポータルサイトの立ち上げが最も効果的でした。社員がリファラルをやろうと思った時に、簡単にアクセスできる環境を作ることが重要だったと思います。また、報奨金制度によって会社がリファラル採用に本気で取り組む姿勢を示せたのもよかったと思います。

ただし大前提として、当社の多くの社員が三菱電機ビルソリューションズを「良い会社だ」と思い、友人・知人に紹介したいと考えてくれていたことが大きかったと思います。なので、私たちは紹介までの障壁を極力取り除き、思った時にすぐ紹介できる仕組みづくりに注力しました。

meltec 2

“社員を信じる”姿勢でスムーズな社内浸透を実現

―― 制度設計や社内浸透において、特に工夫された点はありますか?

古川: リファラル活動の広報として、イントラネットでわかりやすい案内ができるよう努めました。最初のうちにしっかりと作り込めたおかげで問い合わせも少なく、スムーズに導入できたと思います。

高橋: 私は、規程を作る際に“性善説”を意識した点です。社員を信頼して、「これはダメ」「あれは禁止」といったリスクヘッジを極力減らし、社員が気持ちよく参加できるよう制度設計しました。総務人事の業務は通常リスクヘッジをしっかりと行うことが大切なんですが、今回はあえてそこを抑えたんです。

―― トップマネジメントの理解を得るのは大変だったのではないですか?

高橋: 総務人事のトップが賛同してくれたのが大きかったですね。8~9月の事前の検討段階でしっかりと議論していたこともあり、施策内容を初めて説明した時には大変共感してもらえ、導入までずっと応援してくれました。

実際にリファラル活動を本社で担当しているのは私たち2人ですが、背後にはたくさんの人が関わってくれています。社員のみんなを信じることと、社員が会社のことを好きでいてくれていることを前提に進めたことが成功の要因の一つだと思います。

―― リファラル採用を始めてからの実際の成果はいかがでしょうか?

高橋: 導入から4ヶ月で、友人知人からの連絡が135名、カジュアル面談を実施した方が110名、内定が21名、そこから入社を決めた方が19名という成果が出ています。また、イントラネットのリファラル採用専用サイトのページビューは約11,000回と多くの社員に閲覧されています。

特に嬉しかったエピソードとして、ある営業所の方々が自発的にリファラル採用のポスターを作成し、私たちが配ったリファラルカードを設置して掲示してくれたことがあります。現場の方々が主体的に取り組んでくれていることを実感しました。

また、合格した方の内定承諾率が90%と非常に高いのも特徴です。元社員からの応募も複数名あり、アルムナイ採用的な効果も出ています。

―― 高い内定承諾率の理由はどこにあると思いますか?

高橋: やはり友人・知人からの紹介という信頼感があるのだと思います。また、一度退職した方が戻りたいと応募してくれるのは、この会社が本当にいい会社だったと改めて認識してくれた意志の表れだと思いますし、リファラルがそのきっかけになれたことはとても良かったと思います。

meltec 4

“主人公は社員”を体現する持続的なリファラル文化を目指して

―― 今後の展望についてお聞かせください。

高橋: 実際にリファラル活動に参加してくれた社員や入社した方々にアンケートを取り、事実として確認した上で改善点を考えていきたいと思っています。色々と類推で施策を打つには限界があるため、実際の声を聞いた上で次のステップに進みたいですね。

また、新入社員への案内など、これから取り組まなくてはいけない部分もあります。毎年数百人が入社してくるので、そういった方々にもしっかりとリファラル採用を伝えていく必要があります。

一番の目標は、活動に参加してくれた社員がまた参加したいと思えるような仕組みを作ることです。持続性を持たせるためには、一度リファラルした社員がまた「やろう」と思える環境が大切だと考えています。

―― 最後に、貴社のリファラル採用が成功している根本的な理由はどこにあると思いますか?

高橋: 私たちの会社は社会を支えるサービス業という一面を持っており、社員も“自分のため”よりも“社会のため”に働いている人がたくさんいるんです。例えば地震が発生すれば、被災エリアから逃げるのではなくエレベーターが止まった場所へ向かっていく。自分のことを考えたら絶対できないことですが、みんな使命感を持って取り組んでいます。

そういった社員が多いからこそ、リファラル採用でも自然と会社への愛着や仕事への誇りが表れ、紹介につながっているのだと思います。これからも “主人公は社員”という考えのもと、社員が気持ちよく活動できる環境を整えていきたいですね。

meltec 3 リフカム カスタマーサクセス担当の鈴木(左端)も加わり記念撮影。