当インタビューは、「社員にとって紹介したい会社づくり」「本質的な採用における取り組み」を積極的に行う企業様を表彰対象とした「Referral Recruiting AWARD 2023」の受賞企業様へ、その取り組みをお聞きするシリーズです。

株式会社UPSIDERは、「挑戦者を支える世界的な金融プラットフォームを創る」をミッションに、世の中に新しく生まれるサービスや技術を、お金の面から応援する今までになかった『新しい金融サービス』を提供しています。現在は、『成長企業を支援する法人カード「UPSIDER」を提供する会社』から、『世界で戦える日本企業を生み出し、日本の競争力を再び上げることを支援する、AI化された総合金融機関』へとさらなる進化を目指して、多様な人材の採用を強化しています。

今回、株式会社UPSIDERは「リファラル採用に取り組むカルチャーづくりが素晴らしい会社」としてスタートアップ賞を受賞しました。

  • リファラルカルチャー醸成のコツ
  • 部門ごとにリファラル活動を推進するポイント
  • 今後リファラル採用をしたい企業様へのメッセージ

などを中心に、具体的な取り組みについてお話をお伺いしました。

DSC9563

プロフィール

冨士本 康平 様・・・株式会社マクロミルへ新卒入社し、コンサルタントとして約3年間従事。大手食品メーカーを中心に、複数のFMCG関連企業を担当。商品開発及びマーケティング戦略の策定を支援。その後2015年4月、創業して間もないHR系のスタートアップに創業メンバーとして参画。複数回の全社表彰を経て、2017年に執行役員に就任。事業統括責任者として全事業のPL責任を担い、売上約数十億規模まで全社を牽引した後、経営課題の優先順位の兼ね合いで人事統括責任者に異動し、全社の採用活動及び組織づくりに従事。その後、2022年4月、株式会社UPSIDERにHR Managerとして参画。幅広いHR課題に取り組み、特に採用面では25名→100名超の拡大をリード。2023年5月より人事責任者に就任。

近藤 万葉 様・・・高校時代より、インターンとしてCM/web広告の制作会社にてリサーチャー、シェアハウスのポータルサイトを運営する会社にてライター/インタビュアーを経験。その後、SNSの広告代理店にてInstagramの案件の進行に携わり、AnyMind Groupにインターンとして入社。新規事業の立ち上げに従事し、2021/4月より同社に新卒入社。子会社GROVEにて、インフルエンサーマーケティングの営業を担当した後、2022年1月にUPSIDERに転職。スタートアップチームのSales Managerとして、新規ユーザーの開拓、既存ユーザーの課題解決に向けた提案、メンバーのマネジメントに従事。

創業時から大切にしている考えがリファラルの定着に繋がっている

― アワード受賞のお気持ちを教えてください。

冨士本様: 素晴らしい賞をありがとうございます。我々がリファラル採用を推進する時に意識していることでもありますが、枝葉のテクニック論というよりも良い事業、良い組織を全員で創ってきた結果だと思うので、すごく嬉しく思います。

近藤様: リファラル採用は組織として当たり前のように行われていたので、実際に賞をいただいて「私たちがやってきたことって意義のあることなのだな」と初めて実感しました。社会人3年目の私にとって、このような文化がしっかりと根付いている会社で働けることが嬉しいですね。

― リファラル採用は創業時から取り組まれていたのですか?

冨士本様: そうですね。経営陣が中心となって、「理想のチームは自分たちでつくらなきゃダメだよね」という考えを創業初期の頃から現在まで常に発信していて、特にマネージャー層にその意識を浸透させている部分がとても大きいと思います。

― 組織が拡大する中で、創業時からのリファラルのカルチャーをどのように維持していますか?

冨士本様: 多くの企業様でも取り組まれているような、HR主導でのロングリストの運用やミートアップイベントなどは定期的に開催しており、候補者を誘いやすくする取り組みはやってきています。

ですがそれ以上に、「自分たちの組織は自分たちで創る」というメッセージを社内に何度も粘り強く発信し続け、採用においてもそれを実行できる人に仲間になっていただくことが大事だと考えています。採用という業務を人事や経営層だけの仕事と捉えず、自分たちで会社を創っていくという強い意識を持った人たちに入社いただいているのが、創業時からのリファラルカルチャーを維持できている大きな理由の一つだと思っています。

― 新しく入社された社員の方に、どのように会社としてのリファラルの考えを伝えていますか?

冨士本様: HR側では、入社時のオンボーディングコンテンツの一つとして、当社の採用状況や採用方針について説明、リファラル協力のお願いをしています。それに加えて、近藤をはじめとするマネージャー陣が、能動的に自身のチームメンバーに対してリファラルの意識が高まるように働きかけをしてくれていますね。

近藤様: 私のチームでは、入社時に今後のUPSIDERでの成長や活躍の道のりについて話をしています。特に「自分で仲間を連れてきてチームを創り、そこに再現性を持たせる」ことの重要性を強調して伝えています。人事制度としても、それができると評価される仕組みになっているので、まずは仲間になってくれる人を連れてくることがUPSIDERで活躍する上でも重要だし、メリットがあることを伝えています。

― 活動を促すことで社員から抵抗などはありませんか?

近藤様: もちろん、どのように声をかけたらいいか分からないとか、紹介できそうな候補者がいないといった声はよくあります。そういった時は、一緒に取り組んでいますね。例えば、1on1の際にSNSの友達リストを元に一緒に声をかけられる人がいないか探していったり、紹介をためらっている理由を確認していき「UPSIDERに合うかわからない」「面談に誘うのは気が引ける」という時は、「じゃあまず私がその人の転職相談にのるから、それをフックに声をかけてみない?」など別の方法を提案することもあります。「今月は絶対1人は誘ってみようね」と具体的な目標を設定するときもありますね。とにかくまずはやってみてもらうことをとても大事にしています。

― 現場のメンバーがリファラル活動の伴走を積極的に行っているのですか?

冨士本様: 繰り返しになりますが、基本的にどの部門も「自分たちの組織は自分たちで創る」という意識を持ってもらっています。それに加えて先ほど近藤からもお伝えした通り、評価の観点の一つに採用活動への貢献に関する項目も含まれており、そういったことも社員のリファラル採用に対する意識醸成に寄与していると思います。近藤のチームは特に組織を自分たちで創る意識が強く、非常に積極的に取り組んでくれています。もちろん全員が近藤と同じように高い意識を持って自発的に取り組めるわけではないので、HRとしては組織コンディションやその組織の採用状況、あとはマネージャーの得手不得手に応じて、どこまで支援・伴走するかを検討して臨機応変に対応しています。

リファラル採用のように、たくさんの人を巻き込んで実施すべき施策においては、そのプロジェクトがどれだけ盛り上がっている感が出ているかが成功を左右すると思っています。その盛り上がり感が、周辺メンバーのプロジェクトへの興味に繋がり、最終的に当事者として参加するモチベーションに変化し、そしてそれが段々と周囲にも波及しますので、初動時にいかにその盛り上がりを創り出せるかがすごく大切だと考えています。この点もかなり意識して、タイミングや誰をどう巻き込んでモメンタムを拡げていくのがよいか等、舞台裏で結構考えていますね。そのうえで近藤のチームは、近藤がリファラル採用に対する感度が高く、自発的に盛り上がっていってくれたので、HRとしては大きな助けになっています。

DSC9541

― リファラルの目標やKPIは設定されていますか?

冨士本様: それこそプロジェクトを盛り上げるためにスポットで目標やKPIを設定することはありますが、定常的なKPIは設けていません。皆が自然と協力的に動いてくれる環境がありますし、無理にKPIを設定して過度な強制力を加えると、プロジェクトの雰囲気にネガティブな影響を与えてしてしまうリスクがあると考えています。

ただ、他の採用手法と比較してもリファラルは歩留まりが圧倒的に良いのは事実なので、全体の採用活動状況が芳しくない場合などにおいては、リファラルを加速化するために積極的に声かけをしたりはしています。

― 今までの活動の中で応募や採用に直結した施策などはありましたか?

冨士本様: 正直そういった魔法の杖のような施策は今のところありません。ですが、当社においてはマネージャーがどれだけ背中を見せて実際に動いてくれるかが重要だと思っています。例えば近藤のチームは、紹介数や採用実績も多いのですが、これは何の施策を実行をしたかというよりも、マネージャーである近藤の行動がチームメンバーに大きな影響を与えていると感じています。

DSC9537

大切なのはより良い事業や組織構築へのコミット

― 貴社のリファラルの状況はどのように変化していますか?

冨士本様: オープンに申し上げると、昨年度はリファラルからの入社率が全体の50%超でしたが、徐々にその比率は薄まっています。実はそれは意図的にそうしている部分もあって、リファラル採用は非常に強力な採用手法ですが、良くも悪くも同じような経験や考え方をもつ同調的な人材が集まる傾向にあります。会社や事業をもう一段進化させていくためには、そういった似たバックボーンをもつメンバーだけではなく、多様な経験や価値観をもつ人材を採用する必要があると考えています。これらの状況を踏まえ、採用戦略としてリファラル以外にも注力をしている状況です。

― リファラルに関する今後の展望はありますか?

冨士本様: 今回の表彰に甘んじることなく、常に「より良い事業や組織を築く」という大切な原理原則を忘れないようにしたいです。今のリファラル採用の成果はこれを徹底的に意識して取り組んできたからこそだと思うので、テクニカルな方法論に頼るのではなく、魅力的な事業・組織創りに引き続きコミットしていきたいと思っています。

― これからリファラル採用を推進していく企業に向けてアドバイスやメッセージをお願いいたします。

冨士本様: 私達も試行錯誤をしている状況なので参考になる話ができるかは分かりませんが、これから推進しようとしているHRの皆さんには、「現場目線」を特に大切にしてほしいと思います。「組織はみんなで創るもの」というのは正論ですが、それを押し付けるのではなく、現場の視点に寄り添い、その意識を自然と醸成する方法を考えることが重要です。プロジェクトの盛り上がりを保つことも大切で、正論だけでは反発や盛り下がりを招きます。

採用は当たり前のごとく非常に大事ですが、事業を成長させないことにはミッションやビジョンの実現に近づくことはなく、現場メンバーはそこに直結する重要な職務をそれぞれが担っています。だからこそ、HRとして現場の人たちを主語と捉え、現場の事情に深く寄り添ったコミュニケーションを取ること、そして大切な知人や友人に紹介したくなるような組織や事業を創り上げること、これに尽きると思っています。

― 部門目線で採用活動に関わるメリットや、部門の人が採用に積極的に関わりたくなるようなポイントについてもアドバイスをお願いします。

近藤様: 部門での採用活動を促進していくには、予算なども含め採用に対しても一定の裁量や権限を渡すことが重要だと思っています。

例えば、部門に選考プロセスに関与させるだけでなく最終的な意思決定権も渡すなどです。こういった裁量を渡すことで、協力したのに自分が良いと思った候補者をお見送りにしてしまう「リファラルあるある」を減らすことができますし、現場の人が経営者マインドを持つことができると思います。「あなたたちは一つの小さな会社です。採用も予算も全て自分たちで管理する意識を持ちましょう」というメッセージをマネージャー陣に伝え、委ねていくことが、部門での採用活動を促進するに当たっての大きなポイントだと思います。

DSC9571