1. リファラル採用制度とは?設計の重要性

制度設計が成功の鍵を握る理由

リファラル採用とは、社員に知人や友人を紹介してもらう採用手法ですが、成功させるには緻密な「制度設計」が欠かせません。なぜなら、社員にとって知人を会社に紹介する行為は、自身の信用に関わる心理的ハードルの高い行動だからです。

明確なルールやフォロー体制がない状態でスタートすると、社員は「誰にどう声をかければいいかわからない」「紹介した友人が不採用になったら気まずい」と不安を感じ、紹介活動は停滞します。

したがって、社員が迷わず、安心して行動できる「道筋」を企業側が用意する必要があります。

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制度設計で決めるべき4つの要素

効果的な制度を構築するために、以下の4つの要素を具体的に定める必要があります。

  1. ターゲット設定(どんな人材を紹介してほしいか)
  2. 運用ルール(紹介から採用までのフロー、参加資格)
  3. インセンティブ(紹介報酬の有無や内容)
  4. 社内告知・浸透施策(制度の認知と動機づけ)

これらを曖昧にしたまま進めると、後々トラブルの原因となります。次章より、具体的な設計手順を解説します。

リファラル採用の基礎知識や全体像については、以下の記事でも詳しく解説しています。
リファラル採用とは?基本的な仕組みからメリット・デメリット、事例までを解説

2. 【実践】リファラル採用制度を作る5つのステップ

Step1. 目的とターゲットの明確化

制度を作る前に、まず「なぜリファラル採用を行うのか」という目的を言語化します。

「コスト削減」だけを目的にすると、社員は「会社の経費削減のために利用される」と感じてしまい、協力が得られません。「カルチャーマッチした仲間を増やし、組織を強くする」といった、社員にとってもメリットのある目的を掲げてください。

次に、現場社員でも理解できるレベルまで「求める人物像(ペルソナ)」を落とし込みます。「優秀な人」などのような曖昧な表現は避け、「〇〇のスキルを持ち、△△のようなマインドで働ける人」と具体化することで、社員は顔を思い浮かべやすくなります。

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Step2. 紹介フローとルールの策定

社員が友人に声をかけてから、人事に繋ぐまでのフローを設計します。以下のポイントを規定に盛り込んでください。

  • 紹介対象者の範囲(新卒、中途、アルバイトなど)
  • 紹介者の資格(全社員対象か、試用期間中の社員は除くかなど)
  • 応募方法(専用フォーム、チャット、メールなど)
  • 選考プロセス(通常選考と同じか、書類選考免除などの優遇があるか)

特に「紹介情報の入力」は可能な限り簡素化します。入力項目が多いと、それだけで紹介のハードルが上がってしまいます。

Step3. インセンティブ(報酬)の設計

社員の協力を促すために、紹介報酬(インセンティブ)を設定する企業が多く存在します。金額の相場は、中途採用で数万円~数十万円、アルバイト採用で数千円~数万円程度が一般的です。

ただし、金額が高すぎると「金銭目的の紹介」が増え、ミスマッチや強引な勧誘を誘発するリスクがあります。あくまで「紹介への感謝・お礼」としての位置付けを崩さない金額設定が重要です。

また、報酬の支給タイミング(入社時か、試用期間終了後か)も明確に規定しておきましょう。

報酬相場や決め方の詳細については、以下の記事が参考になります。
リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場|決め方や報奨金以外の事例も紹介

Step4. トラブル回避の規定作り

制度導入後に発生しがちなトラブルを未然に防ぐため、禁止事項や例外ルールを設けます。

  • 不採用時のフィードバック: 紹介者へ合否理由をどこまで伝えるか事前に決める。
  • 紹介の重複: 複数の社員から同一人物の紹介があった場合、どちらを優先するか(基本は先着順)。
  • 紹介会社との重複: 過去にエージェント経由で応募があった候補者を、リファラルで再応募可能とするか。

特に不採用時の対応はデリケートです。社員と友人の関係性を壊さないよう、「不採用通知は人事から直接本人に行う」といった配慮あるルールが必要です。

Step5. 社内告知とプロモーション

制度ができても、社員に知られなければ利用されません。社内報、全社総会、チャットツールなど、あらゆる接点を活用して告知を行います。

一度の告知で浸透することは稀です。「今月の募集ポジション」や「紹介による入社事例」などを定期的に発信し、リファラル採用を日常的な風景にする継続的な努力が求められます。

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効果的な告知文面やテンプレートについては、以下の記事をご覧ください。
リファラル採用の社内告知|案内文・例文のテンプレートや失敗しない方法を解説

3. 制度設計でやりがちな失敗と対策

ルールを細かくしすぎる

不正防止を気にするあまり、手続きを厳格にしすぎると失敗します。

「事前の申請書提出が必要」「紹介理由を400字で記述」といった煩雑なフローは、多忙な現場社員の意欲を削ぎます。

初期段階では性善説に基づき、可能な限りシンプルなフローで開始し、運用しながら必要に応じてルールを追加していくアプローチを推奨します。

制度を作って満足してしまう

「制度を作れば自然と紹介が集まる」というのは大きな誤解です。

社員にとって採用活動は本業ではないため、放っておけば優先順位は下がります。

定期的なキャンペーンの実施や、協力してくれた社員への称賛など、人事が旗振り役となって制度を運用し続ける必要があります。

その他の失敗要因や改善策については、以下で詳しく解説しています。
リファラル採用の失敗事例3選!形骸化を防ぐ7つの成功ポイント

4. 自社に合った制度設計で採用を加速させる

リファラル採用制度は、一度作って終わりではありません。企業のフェーズや採用課題に合わせて、柔軟に見直し続けることが成功への近道です。

まずはシンプルなルールから小さく始め、社員の声を聞きながら、自社独自の「紹介したくなる文化」と「制度」を育ててください。

制度設計に迷いがある場合は、リファラル採用に特化したサービスや専門家の知見を借りるのも有効な手段です。

5. 【付録】リファラル採用規定のチェックリスト

制度設計の抜け漏れを防ぐため、就業規則やリファラル採用規定を作成する際に確認すべき項目をまとめました。
これから規定書を作成する際、あるいは既存の規定を見直す際の参考にしてください。

設計項目確認ポイント
総則制度の目的(採用強化、エンゲージメント向上など)は明記されているか
紹介者の資格紹介できる社員の範囲(正社員、契約社員、アルバイトなど)は明確か
対象職種どのポジションが対象か、最新の求人情報はどこで確認できるか
紹介・応募方法指定のフォーム、メール、チャットなど、具体的な申請ルートは定まっているか
選考フロー通常選考との違い(書類選考免除、いきなり面接など)はあるか
インセンティブ金額、支給条件(入社時、試用期間終了後など)、支給日が決まっているか
禁止事項虚偽の申告、強引な勧誘、金銭のやり取りなどへの対策は含まれているか
個人情報被紹介者の個人情報の取り扱いについて同意を得るフローになっているか

6. 制度運用の負荷を下げる「ツール」の活用

制度を設計し運用を開始すると、人事担当者には当然新たな業務が発生します。「誰が誰を紹介したかの進捗管理」「インセンティブの集計」「社員への継続的な周知活動」など、アナログ管理では限界を迎えるケースが少なくありません。

リファラル採用が活性化しない原因の多くは、制度自体の不備ではなく「社員にとって紹介作業が面倒」「人事の管理工数が足りずフォローできない」という運用面(Execute)の問題です。

制度設計と同時に、これらを効率化する専用ツールの導入を検討することで、運用の成功率は飛躍的に高まります。

ツール選びは「機能」より「定着サポート」

ただし、ツールはあくまで「箱」であり、導入するだけで自動的に紹介が増える魔法の杖ではありません。

成功企業に共通しているのは、ツールを活用しながら「自社に合った制度設計」と「社員への継続的な周知」を徹底している点です。

そのため、ツール選定の際は「機能の豊富さ」だけでなく、「導入後のコンサルティングやサポート体制」が充実しているかを重視してください。

Refcomeでは、使いやすいツールの提供はもちろん、専任のコンサルタントが貴社の課題に合わせた「制度設計」から「社内広報」までを一貫してサポートしています。

「具体的にどのようなサポートが受けられるのか?」「他社はどのように制度を定着させたのか?」といった詳細は、サービス資料にまとめています。制度設計のヒントとして、ぜひお手元でご覧ください。

≫ Refcomeのサービス資料を見てみる

また、他社ツールも含めて公平に比較検討したい方は、以下の記事も参考にしてください。
【2025年版】リファラル採用おすすめツール7選!選び方と成功事例を紹介

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7. 制度設計の参考にしたい成功事例

制度を机上の空論で終わらせないためには、実際に成果を出している他社の仕組みを参考にすることが近道です。ここでは、制度やルールの工夫によってリファラル採用を活性化させた事例を2つ紹介します。

事例1:SB C&S株式会社(紹介フローの簡略化)

SB C&S株式会社では、社員が友人に声をかけやすい環境を作るため、紹介プロセスを徹底的に簡略化しました。

具体的には、社員に専用のQRコードを発行し、それを友人に読み取ってもらうだけで紹介が完了する仕組みを整備。「面倒な手続き」を排除したことで、日常会話の延長で紹介が生まれる文化の定着に成功しています。

参考:Refcomeが実現したSB C&S社の全社的リファラル採用

事例2:株式会社SmartHR(不採用時のフォロー規定)

「紹介した友人が不採用になったら気まずい」という社員の心理的ハードルを下げるため、SmartHR社では不採用時のルールを明確化しました。

不採用となってしまった場合でも、会社が費用を負担して食事へ行ける「ごめんねごはん」などの制度を用意し、社員と候補者の関係性が崩れないよう配慮。

結果に関わらず紹介してくれた行動自体を称賛する文化を作ることで、継続的な紹介を生み出すことに成功しています。

参考:常に進化し続けたい!SmartHR式リファラル活用

さらに多くの事例を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。業界ごとのユニークな制度やルールを多数紹介しています。
リファラル採用の成功事例15選|大手や中小企業の導入実績を紹介

8. まとめ:制度は「運用」されて初めて価値が出る

リファラル採用制度は、綺麗に整った規定を作ることがゴールではありません。社員に使われ、実際に友人が紹介され、採用につながって初めて価値が生まれます。

最後に、制度設計のポイントを振り返ります。

  1. 目的を明確にする:社員が共感できる「採用の目的」を掲げる。
  2. ターゲットを絞る:現場目線で具体的な人物像(ペルソナ)を定義する。
  3. フローを簡素化する:紹介の手間を極限まで減らす。
  4. インセンティブを適正にする:金銭だけでなく、感謝や称賛の仕組みを入れる。
  5. 告知し続ける:制度を風化させないよう、定期的に情報を発信する。

これから制度を作る方も、見直しを行う方も、まずは「社員にとって使いやすいか?」という視点で設計を行ってみてください。自社のカルチャーに合った制度を育て上げ、採用力を底上げしていきましょう。

もし、「自社に最適な制度設計について専門家に相談したい」「運用の手間を削減するツールを検討したい」という場合は、ぜひRefcomeにご相談ください。