2026年の採用市場におけるリファラル採用の重要性

現代の採用市場では従来の手法だけでは優秀な人材の確保が難しくなっています。

リファラル採用が注目される背景には、構造的な変化と明確なメリットがあります。

労働力不足の深刻化と採用コストの限界

日本の労働者不足を判断する数値は年々悪化しています。2025年版中小企業白書では、約7割の企業が直近5年で採用コストが増加したと回答しました。

人材紹介会社を利用する場合、採用決定時に年収の30~35%の成功報酬が発生します。

一方、リファラル採用は紹介報酬や会食費などの実費のみで運用可能なため、採用単価を数十万円から数百万円単位で抑制できる点が大きな魅力です。

転職潜在層へのダイレクトアプローチ

転職市場において、積極的に活動している層は全体の3割程度に留まります。

残りの7割は、「良い話があれば検討したい」と考える転職潜在層です。この求人サイトに登録していない層へリーチするには、社員の個人的なネットワークが有効です。

信頼できる友人からの誘いは、潜在層がキャリアを再考する強力な動機になります。

採用ミスマッチの防止と定着率の向上

リファラル採用は、マッチング率の高さと定着率の良さが最大の特徴です。自社の文化や業務内容を理解している社員が候補者のスキルや人柄を見極めて紹介するため、入社後のギャップが最小限に抑えられ、早期活躍が期待できます。

実際に社員紹介経由の入社者の定着率は90%を超えるという会社も珍しくありません。社内に既知の同僚がいる安心感は、オンボーディングを円滑に進める要因となります。

項目リファラル採用求人媒体人材紹介
1人当たりコスト低(数万〜30万円)中(50〜150万円)高(年収の35%)
入社後の定着率非常に高い普通普通
候補者の属性転職潜在層が中心転職顕在層が中心転職顕在層が中心
マッチング精度社員による事前審査自己申告に基づくエージェントによる

関連記事:リファラル採用とは?基本的な仕組みからメリット・デメリット、事例までを解説

リファラル採用が活性化しない3つの根本原因

一方で、制度を導入しても成果が出ない企業があるのも事実です。そうした企業に共通する原因は何でしょうか。

活性化を妨げる要因を「心理的」「物理的」「認知的」な視点で分析します。

社員が抱える不安

社員にとって知人を紹介する行為は、自分自身の信用を賭ける重い決断です。知人の人生を左右することへの責任感や、「ブラックな環境と思われないか」という不安がブレーキになります。

特に、不採用になった場合の人間関係の悪化を恐れる社員は非常に多いです。

他にも、紹介した友人が活躍できなかった際に、自分自身の社内評価が下がることを懸念するのではないかという心理も働きます。

紹介プロセスの煩雑さ

忙しい社員にとって、紹介手続きは負担でしかありません。複雑であればあるほど、協力する意欲を失います。

専用フォームへの入力項目が多い場合や職務経歴書の提出を必須にすると紹介のハードルが上がってしまうため、避けましょう。人事から紹介者へのフィードバックが遅れることも、紹介者のモチベーションを下げます。

社員にとって採用活動は本業ではありません。そのことを強く自覚し、少しでも簡単な制度を心掛けてください。

制度と求める人物像の認知不足

制度があることを社員が忘れてしまうケースは、活性化を妨げる大きな要因です。一度の説明だけで終わらせず、継続的に情報を発信し続ける必要があります。

また「誰を紹介すればいいかわからない」という迷いも、活動を停滞させます。どの部署で、どのようなスキルを持つ人を求めているのかが具体的に伝わっていないと、社員は知人の顔を思い浮かべられません。

リファラル採用を活性化させる7つのコツ

活性化を実現するには戦略的な制度設計と継続的な運用が不可欠です。ポイントを7つにわけて解説します。

コツ①経営層のコミットメントを見せる

リファラル採用を人事部だけの施策にせず、全社課題として位置づけます。経営トップが「仲間集めは会社の未来を作る重要プロジェクト」と明言することが重要です。

全社会議やメッセージ発信を通じて、制度の意義や導入背景を繰り返し共有してください。経営層の熱量が社員に伝播することで、協力的な文化が醸成されます。

コツ②社員が共感できる目的と、明確なターゲットを発信する

「採用コスト削減」のみを目的に掲げると、社員の意欲は削がれてしまいます。「最高のチームを作り、より大きな価値を顧客に届ける」といった前向きな目的を定義してください。

また、求める人物像は現場社員がイメージできるレベルまで具体化します。「〇〇のスキルを持ち、△△なマインドで働ける人」と明示することで、社員は適切な知人を特定しやすくなります。

コツ③シンプルな紹介フローを作る

社員が紹介する手間を最小限に抑える仕組みを構築します。名前と連絡先を入力するだけの簡易フォームや、QRコードからの紹介導線を整備してください。

職務経歴書がなくても、カジュアル面談からスタートできる柔軟なプロセスも推奨されます。

日常的に利用するSlackやLINEなどのツールと連携し、数クリックで完了する仕組みが理想的です。

コツ④適切なインセンティブと称賛される文化を設計する

協力に対する感謝を、しっかり形にする制度を用意しましょう。紹介報酬の相場は5~20万円程度が一般的ですが、職種や難易度に応じて調整が必要です。

金銭だけでなく、会食代の補助や特別休暇などの非金銭的報酬も効果的です。

さらに採用決定時だけでなく、カジュアル面談設定などの段階で少額の謝礼を出すと行動が加速しやすい傾向もあります。協力してくれた社員を社内報や朝礼で称賛する文化作りも忘れてはいけません。

コツ⑤紹介のハードルを下げる接点を用意する

選考ではなく、話を聞くだけの場として、「カジュアル面談」がおすすめです。いきなり応募を勧めるのは抵抗がありますが、情報交換の場であれば社員も誘いやすくなります。

「会社のことをどう話せばいいか分からない」という社員に向けて、自社の魅力をまとめた資料やパンフレットも準備してください。

また、不採用時の気まずさを解消するためのマニュアルやフォロー体制も整備します。

コツ⑥継続的なプロモーション・成功事例を共有する

制度を形骸化させないよう、定期的な情報発信を徹底します。全社会議、社内掲示板、メール配信など複数の方法でリマインドを継続しましょう。

「リファラル経由で入社した人が活躍している」というストーリーを共有することも、強力な動機付けになります。

新しい募集ポジションが発生するたびに、ターゲット像を添えて周知を繰り返します。

コツ⑦専用ツールを活用し、データ分析と改善を進める

管理工数を削減し、PDCAサイクルを回すために専用ツールを導入します。ツールを活用することで、誰が誰に声をかけ、どのような結果になったかを可視化できます。

認知率、協力率、紹介数、決定率などのKPIを計測し、ボトルネックを特定してください。データに基づき、特定の部署へのアプローチやインセンティブの見直しを適宜行います。

リファラル採用の成果を定量化するための計算式は以下の通りです。

採用決定数 = 社員数 × 社員協力率 × 1人当たりの紹介数 × 選考通過率

各指標の改善に向けたアクションが必要です。

成功の鍵は「エンゲージメント」の向上

リファラル採用の成功は、単なる制度の優劣ではなく、組織のコンディションに左右されます。

活性化を左右する本質的な要素を詳しく説明します。

リファラル採用は「組織の健康診断」

社員が友人を誘いたいと思うかどうかは、自社に対する愛着や満足度に直結します。当然ですが、職場に不満がある社員は、大切な知人に自社を勧めることはありません。

リファラル紹介が多く発生している組織は、従業員エンゲージメントが高い状態にあります。逆に活性化しない場合は、制度をいじる前に組織文化や働きやすさに課題がないかを確認する必要があります。

eNPS(従業員推奨度)の定期測定

自社を勧める意向がどの程度あるかを数値化する「eNPS」も非常に有効です。「自社を知人や友人に勧めたいと思うか」を0から10点で問い、現状を把握してください。

推奨者が多い組織ほど、リファラル採用は自然と加速します。反対に批判者が多い場合は、まずその要因を取り除くことが活性化への近道となります。

アクティブ社員への個別アプローチ

全社員に一律でお願いするだけでなく、まずはエンゲージメントの高い「アクティブ社員」を巻き込みます。

会社への貢献意欲が高い社員は、積極的に知人を紹介してくれる可能性が高いです。彼らに個別に依頼し、活動をサポートすることで、成功事例を早期に作ることができます。

初期の成功事例が積み重なることで、他の社員にも紹介の輪が広がります。

ゲーミフィケーションによる「楽しさ」の演出

採用活動を「義務」ではなく「ゲーム」のように楽しむ仕組みも効果的です。紹介数に応じたスタンプラリーや、期間限定の紹介キャンペーンを実施してください。

ポイント制度や称号の付与など、小さな達成感を積み重ねる工夫が継続性を生みます。

関連記事:リファラル採用制度の作り方|失敗しない設計手順と運用ルールを徹底解説

リファラル採用の活性化に成功した企業事例

多くの企業が独自の工夫を凝らすことで、リファラル採用を組織文化として定着させています。

ここでは代表的な4つの事例から、具体的な施策と成果を紹介します。

株式会社セールスフォース・ドットコム:全社的な重要事項への格上げ

IT大手のセールスフォース・ドットコムでは、社内コミュニケーションツールを活用し、採用部門から不足しているポジションや求める能力を具体的に発信しています。

経営層がこの施策を「会社全体の重要事項」として位置づけて周知徹底した結果、社員の自発的な協力が生まれました。紹介者への旅行券プレゼントといったキャンペーンも奏功し、年間採用人数の約50パーセントをリファラル経由で獲得しています。

株式会社SmartHR:心理的ハードルを払拭する「ごめんねごはん制度」

SmartHRは、社員が16名の時期から紹介意向を調査するなど、初期段階からリファラル採用に注力してきました。

特筆すべきは、紹介した友人が不採用になった際の気まずさを解消するために、会社負担で会食ができる「ごめんねごはん制度」です。これにより誘いやすさが向上し、全従業員の約30%がリファラル経由で入社しました。

また、他チャネルと比較して内定率が10倍以上に達しています。

SB C&S株式会社:QRコードによるプロセスの極限簡素化

ソフトバンクグループのSB C&Sは、リファラル採用を中長期的な戦略の柱に据え、QRコードを活用して紹介プロセスを極限まで簡略化。社員紹介経由の入社者の定着率が約90%と非常に高いことに着目し、トップメッセージによる再定義を行いました。

煩雑な入力を排除することで現場の協力率を高め、質の高い人材を効率的に獲得し続けています。

株式会社薬王堂:専門職採用と定着率向上の両立

小売・ドラッグストアを展開する薬王堂では、確保が難しい「登録販売者」などの専門職採用にリファラルを活用しています。LINEやSNSで手軽に求人情報を送れる仕組みを構築し、給与明細へのチラシ封入など周知を徹底しました。

導入から1年で採用全体の約15%をリファラル経由が占めるようになり、離職率は一般公募の約半分にまで抑制されています。

関連記事:リファラル採用の成功事例15選|大手や中小企業の導入実績を紹介

注意するべき法律と、トラブル回避のための運用ルール

活性化を進める上で、職業安定法などの法的ルールを遵守することは不可欠です。

リスクを回避し、健全な運用を行うためのポイントを詳しく解説します。

報酬(インセンティブ)の整理

職業安定法では、原則として労働者の募集に関する報酬の供与を禁止しています。しかし、以下の条件を満たすことで「賃金」として適法に支払うことが可能です。

  • 就業規則への明記 ―― 支給対象、金額、条件を明確に定め、労働基準監督署に届け出てください。
  • 給与としての支給 ―― 紹介報酬は「賃金」として、他の手当と同様に給与明細に記載して支払います。
  • 社会通念上、相当な範囲 ―― 数万円から数十万円程度とし、本業の月給を大きく超えるような金額は避けてください。
  • 反復継続の禁止 ―― 紹介活動を社員の「業」にしないよう、ノルマの設定や過度な勧誘を禁止してください。

違反した場合は懲役や罰金が科される可能性があるので、しっかりとした制度を作りましょう。

関連記事:リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場|決め方や報奨金以外の事例も紹介

人間関係のトラブルを未然に防ぐ規定作り

知人を不採用にする際の気まずさを解消するためのルールを事前に定めます。特に、選考基準が通常の公募と同じであることは、勘違いが起きやすいポイントです。全社員に周知徹底してください。

  • 不採用通知の徹底 ―― 人事担当者から候補者へ直接連絡し、紹介者の負担を減らします。
  • 理由の非公開 ―― 具体的な評価内容は、紹介者を含む第三者には一切開示しないことを徹底します。
  • 情報の透明性 ―― 選考プロセスの進捗をリアルタイムで紹介者にフィードバックし、不安を取り除きます。

関連記事:リファラル採用は気まずい?トラブル回避のためのポイントを解説

リファラル採用活性化を加速させるツールの選び方

運用の手間を削減し、活性化を最大化するには適切なツールの導入が有効です。

選定時に確認すべき4つのポイントを詳しく説明します。

1. 従業員にとっての使いやすさ

リファラル採用の主役は現場の社員です。専用アプリがあり、SlackやLINEなどの既存ツールとシームレスに連携できるかを確認してください。数クリックで紹介が完了し、知人に求人情報を送れる設計であることが最低条件です。

社員に「面倒だ」と感じさせない使い心地が、協力率を大きく左右します。

2. データの可視化と分析機能

誰が何人に声をかけ、どのチャネルから応募が来たかをリアルタイムで把握できる必要があります。ログイン率や紹介発生率などのKPIを部署ごとに分析できる機能が備わっているか確認します。

データを基に「どの施策が効いているか」を判断し、PDCAを高速で回せるツールを選びましょう。

3. カスタマーサクセスの充実

ツールを導入しただけでは文化は醸成されません。導入後のキックオフ支援や、他社の成功事例を共有してくれる伴走体制があるかが重要です。自社の組織課題に合わせたキャンペーンの企画や、社内告知文の作成までサポートしてくれるベンダーが理想的です。

中長期的に伴走し、改善提案を続けてくれるパートナーを選定してください。

4. コストパフォーマンスと導入規模への適応

初期費用と月額費用、そして削減できる採用コストをシミュレーションします。特定の部署から始める「スモールスタート」に対応した柔軟なプランがあるかも確認項目です。

全社展開した際の管理工数の削減効果も、投資判断の材料にしてください。

ツールの比較や選び方の詳細については、こちらの記事も参考にしてください。

【2026年版】リファラル採用おすすめツール9選!選び方と成功事例を紹介

リファラル採用のこれから

今後の採用市場において、リファラル採用はさらに進化した形へと変化していきます。最後に、将来を見据えた戦略立案に役立つ予測をご紹介します。

管理職の負荷軽減と「全員採用」の浸透

管理職の業務過多が問題となる中、現場での採用活動は負担になりがちです。そのため、リファラル採用によって文化にフィットした人材を全社員で集める「全員採用」が加速しやすい環境が生まれます。

管理職一人が抱え込むのではなく、チーム全体で仲間を増やす文化は、離職率の低下にも寄与します。

採用を「人事の仕事」から「自分たちのチームを創るための活動」へと再定義する企業が増えるでしょう。

AIとデータによるマッチングの高度化

2026年以降、AIを活用した候補者推薦や紹介文の自動生成が一般化します。社員のネットワークをAIが分析し、「この知人なら自社の〇〇ポジションに合う」と提案する仕組みが普及するでしょう。

心理的ハードルの一つである「誘い文句の作成」もAIがサポートし、紹介の速度は飛躍的に向上していきます。経験や勘に頼らない、データに基づいたリファラル採用がスタンダードになります。

非金銭的な報酬と「情緒的価値」の増大

高額な報酬よりも、会社との繋がりの深さや貢献に対する称賛が重視されるようになります。リファラル採用を通じて、自社の良さを再認識するプロセスそのものがエンゲージメント向上に寄与します。

「仲間を増やすこと自体が誇らしい」という情緒的な価値をいかに設計できるかが、勝ち残る企業の条件となります。

自走する採用文化こそが最大の競争優位

リファラル採用の活性化は、単なるコスト削減の手法ではありません。「自分たちの組織を自分たちで創る」という強い意志を持つ組織へと変革するプロセスです。社員が大切な友人を誇りを持って誘える組織は、外部からも魅力的に映り、自然と人が集まります。

労働力不足が加速する今、リファラル採用を活性化させ、自走する採用文化を築き上げましょう。

「リファラル採用を導入したいが何から始めたらいいか分からない」「制度の形骸化を何とかしたい」とお悩みの方は、まずは以下の資料をご活用ください。

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監修者

清水 巧株式会社ウィルオブ・パートナー代表取締役社長

SansanでのCS組織立ち上げを経て、2014年に株式会社リフカム(現:株式会社ウィルオブ・パートナー)を設立。リファラル採用支援サービス「Refcome」を通じて数多くの企業の制度設計・風土改革を支援。現場を巻き込むノウハウに精通する。2018年Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人」選出。2024年よりウィルオブグループにて企業の採用力強化をリードする。

SansanでのCS組織立ち上げを経て、2014年に株式会社リフカム(現:株式会社ウィルオブ・パートナー)を設立。リファラル採用支援サービス「Refcome」を通じて数多くの企業の制度設計・風土改革を支援。現場を巻き込むノウハウに精通する。2018年Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人」選出。2024年よりウィルオブグループにて企業の採用力強化をリードする。