グローバル全体で行う社員紹介制度。日本でも社員のエンゲージメントを強化し、自発的に仲間を募るカルチャーを創出。
当インタビューは、「社員にとって紹介したい会社作り」「本質的な採用における取り組み」を積極的に行う企業様を表彰対象とした「Referral Recruiting AWARD 2018」の受賞企業様への取り組みをお聞きするシリーズです。
今回ご紹介するのは、CRMプラットフォーム“Salesforce”を販売、世界中の顧客から高い評価を集める株式会社セールスフォース・ドットコム。社員紹介制度いわゆる「リファラル採用」には、企業トップの理解とサポートが何より重要」と話すリクルーティングシニアディレクター・古瀬悠人様、リクルーティングマネージャー・佐田浩一様、シニアスペシャリストリクルーティングマーケティング・江原智子様に話を伺いました。
「会社の成長には人が一番重要である」という企業文化の下に
___「Referral Recruiting AWARD 2018」の受賞、おめでとうございます。今回は、御社が独自に展開されているリファラル採用プログラムが評価されました。
弊社は、グローバルで紹介プログラムを実施しており、「全世界の採用枠」を「全世界の社員」へ紹介できる仕組みをとっています。「会社の成長には人が一番重要である」という企業文化の下、会社が成長するために社員が一緒に働きたいと思う人を紹介するのは、ごく普通のことだと捉えています。
エグゼクティブ、経営者層が人材採用にとても力を入れているので、それを見ている社員も情熱をもって周りの人を紹介してくれていることも特徴的だと感じており、
現在では、年間採用人数の約半数をリファラル採用経由で採用できています。
___御社の企業文化を現す「Ohana (オハナ)」という言葉に通じるものがありますね。
Ohanaは、ハワイ語で「家族」を意味する言葉です。弊社には、部署に関わらず助け合うという企業文化が社員の根底に根付いています。弊社の創業者であるマーク・ベニオフは、社員だけでなくその周りのパートナー様やお客様も含めて「ファミリー」と呼び、全ての人がお互いを家族のように助け合うことでより良い社会を作っていきたいと考えていますし、私たち社員もその考えに賛同しています。
___中途採用となると、さまざまな文化をもった人たちが集まってくることになると思うのですが……。
弊社にその人がうまくフィットするかどうかは、採用面談中からリクルーターが常に観察しています。弊社のコーポレートバリューである「Trust(信頼)」、「Customer Success(カスタマーサクセス)」、「Innovation(イノベーション)」、「Equality(平等)」に当てはまる人材であれば、企業文化である「Ohana」にもフィットすると考えています。
___例えば、リファラルで応募してきた人を採用しないケースもあるのでしょうか?
リファラルの場合は、応募する前に紹介した社員を通じて実際に社風を聞くことができたり、実際に働いている人のイメージが沸きやすい分、他の応募者よりは有利かもしれません。しかし、最も重要なのはそのポジションに必要なスキルセットです。たとえ紹介であったとしても、その点は担当マネージャーが公正な目で確認しています。
エージェント採用からリファラル採用にシフトした理由
___リファラル採用のメリットはどんなところにあると思われますか?
弊社では、リファラルによる採用が増えた結果、退職率も下がりました。それに加えて社員一人ひとりのプロダクティビティも上がりました。おそらく社員が自分の経験からそれぞれのポジションに必要なスキルセットや環境を理解したうえで紹介してくれていることでうまくいっているのではないでしょうか。
___リファラル採用導入以前は、どのように採用されていたのでしょうか?
2012年頃には、すでにリファラル採用はありました。とはいえエージェント経由の採用がメインで、リファラル採用はほんの一部でした。しかし、会社が成長を遂げる過程において必要とされる採用人数を満たし、社員の定着化をはかるためにもリファラル採用へ力を入れることが必須でした。
___具体的にはどのようなことでしょうか?
エージェント採用の費用は高額であるにもかかわらず、他の採用方法に比べて退職率が高かったのです。一方、採用したソースを比較すると、勤続年数が長い方や、KPIのパフォーマンスが高い方も、リファラル採用の人でした。それならエージェント採用の割合を減らして、リファラル採用に力を入れようということになったのです。
___そこからどのようなリファラル採用の戦略を立てられたのでしょうか。
まずは社内に対して「募集中のポジション告知」を行います。「こういう枠(ポジション)が空いているので力を貸して欲しい」というメッセージを採用部門から社内コミュニケーションツールで配信するとともに、経営層からも社内に周知してもらいました。また、紹介した社員の中に対して旅行券をプレゼントするなど、社員が進んで社員紹介をしたくなるようなキャンペーンも実施しています。
___社員にとってもメリットがあるのですね。
先日、リファラル採用で日系の大手企業から転職してきた社員と話す機会があったのですが、日系企業から外資企業への転職はハードルが高いと感じていたとのこと。でも実際はそうではなく、社風や企業カルチャー、そして充実した福利厚生制度や、セールスフォース・ドットコム独自の働きやすさに対する各種取り組みに感動し、前職の同僚にも紹介したくなったとのこと。この方は実際に3名の前職の方を紹介してくれました。
転職しなくても十分にキャリアを伸ばせるセールスフォース・ドットコム社の環境
___リファラル採用で、社員に期待されているのはどのようなことですか?
個人的には、長く皆さんに働いて欲しいと思っています。また「転職しなければキャリアが伸びない」というような考えは持ってほしくないですね。5年後、10年後も、セールスフォース・ドットコム内で、社員それぞれが思い描いたキャリアを積んだり、社内異動に手を挙げ、新しいことにチャレンジしたりしていって欲しいと願っています。
___転職しなくても、セールスフォース・ドットコムの社員でいる限り、いろいろな可能性があるということですね。
この5~6年の間に、Salesforce製品が大幅に強化され、顧客数も世界で15万社を超えました。おかげさまで売り上げなどの業績も伸びており、さらなる成長も期待できます。企業の成長に合わせ社員の拡充も必要です。日本だけでなく世界で働くチャンスもあります。現在、本社でサポートしているグローバルプログラムでは、社員は全世界の空いているポジションに自由に応募することができます。
また、ポジションが変わらなくても、例えば営業であれば、担当する会社の規模も状況に応じて変わっていきます。そうなれば同じ製品であってもお客様への提案方法は変わってきます。製品は年に3回、バージョンアップしていますから、常に勉強が必要になります。また社員もどんどん増えていますから、新しい刺激を受けることができます。
___御社にとってのリファラル採用とは?
社員の紹介で「家族が増える」という感じでしょうか。もちろん社員それぞれにKPIはありますが、他部門と連携することが重要ですから、ひとりだけではなく、その周りの社員も同じようにKPIを達成することに意味があると会社は考えています。
___中途採用だけでなく、新卒採用にもリファラル採用は適用されますか?
知り合いのお子さんが「興味がある」と連絡をくだされば、できるだけ弊社を知っていただけるような機会を設けています。しかし中途採用と同様、ポジションに応じたスキルセットが優先されますから、選考に関しては他の応募者と同じ条件です。
リファラル採用を導入する際に注意すべきことは
___社員紹介、リファラル採用を始めるにあたって、注意すべきことはありますか?
1つ目は社員紹介プログラムを導入するのであれば、きちんと経営者を巻き込んで進めるべきだということです。会社のビジョンや戦略を決める経営が、「会社のために社員紹介をするのだ」という強い思いでメッセージを伝えなければ、社員が動くことはありません。
2つ目は、「とりあえず社員紹介を始めるからあなたが担当して」というのではなく、きちんと担当者をアサインしてしっかりと戦略を練ることです。
3つ目は、そのポジションに対するスキルセットとそのスキルに必要なコンピテンシーをきちんと測ることです。紹介だからということだけで採用してしまうと、後々、社員紹介プログラム自体が壊れたり、退職率が上がったりする可能性も出てきます。
___お話を伺っていると、「人」を採用することの大切さが伝わってきます。
例えば、シリコンバレーで会社を立ち上げようと思ったとき、まずどんなポジションの人を採用すると思いますか? おそらく多くの会社ではエンジニアを採用するのではないでしょうか。しかし、弊社の創業者であるマーク・ベニオフは、「いい人材を採用するためにはその道のプロが必要だ」と考えて、最初に人事担当者を採用しました。「人」に対する情熱を感じるエピソードだと思います。
___リーダーの「人」に対する情熱が、確実に社員一人ひとりに伝わっているのですね。
会社が存続するためには、もちろん売上を上げなくてはなりませんが、それと同時に「自分たちが社会に何が貢献できるかを考えなさい」と、マークは常に言っています。「ビジネスは世界を変える最良のプラットフォーム」という彼の考えに社員もまた賛同しています。
___Ohanaという「人」を大切にする文化が根付き、しっかりと体現されているのでリファラル採用の成果にもつながり、そして新たな「Ohana = 家族」にもしっかりと文化が継承されているのですね。貴重なお話をありがとうございました。
ご一読いただきありがとうございました。
下記、参考記事ではリファラル採用に成功している企業の事例を解説しています。
是非、こちらもご一読ください。
参考記事:
リファラル採用を成功している企業10社の事例を解説