市場におけるリファラル採用の普及状況

弊社が2025年7月に実施した調査によると、81.4%の企業がリファラル採用を実施しており、導入企業は年々増加傾向です。中には、採用の半数以上をリファラル採用で担っている事例もあります。

採用コストの高騰や離職率に悩む企業も多い中、リファラル採用は現代の採用戦略において欠かせない手法になりつつあります。

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調査項目(2025年7月時点)調査結果の数値
リファラル採用の実施率81.4%
リファラルでの採用実績あり91.8%
専用システムの導入率56.6%
1年後の定着率90%以上約27.0%

なぜ「やばい」という言葉で検索されるのか

リファラル採用が「やばい」と検索される理由は、主に2つの側面があります。

1つ目は、紹介された候補者が「不採用になったら気まずい」という心理的ハードルを感じることです。

2つ目は、導入企業が「制度が形骸化して成果が出ない」「リファラル採用をきっかけにトラブルが発生した」という運用上の壁に直面することです。特に、ミスマッチや人間関係のトラブルといった負の側面が強調される傾向にあります。

しかし、負の側面は適切な制度設計によって回避が可能です。リファラル採用そのものが「やばい」のではなく、運用方法が「やばい」状態にある企業が多いというのが実態です。

リファラル採用の定義と本来の目的

リファラル採用は、従業員の自然なネットワークを活用する手法です。

本来の目的は、単なる採用コストの削減ではありません。自社の文化や業務内容を熟知した従業員が介在することで、情報の非対称性を解消することに本質があります。情報の非対称性が解消されると、入社後のミスマッチを防ぐことができ、高い定着率を実現します。

弊社の調査では、他の手法と比較してリファラル採用の定着率は約2倍という結果も出ています。

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リファラル採用が「やばい」とされる5つの理由とリスク

リファラル採用には、従来の手法にはない特有のリスクが存在します。このリスクを放置すると、組織に悪影響を及ぼす可能性があることは事実です。ここでは、特に注意すべき5つのポイントを詳しく解説します。

人間関係の悪化と連鎖退職のリスク

リファラル採用は、個人のつながりを利用するため、仕事とプライベートの境界が曖昧になります。紹介された候補者が入社後に期待通りの活躍ができない場合、紹介した従業員の社内評価に影響が出る恐れがあります。紹介した従業員と候補者の間で人間関係が悪化すると、双方が居心地を悪くし、離職に至るケースも考えられます。

また、紹介した従業員が先に退職した場合、入社した社員が後を追うように退職してしまう連鎖退職のリスクも無視できません。

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リスク要因具体的な事象の説明
人間関係の悪化業務上のミスが私生活に波及
社内評価の低下質の低い紹介を繰り返す状況
連鎖退職心理的な依存関係による離脱

関連記事:リファラル採用は気まずい?トラブル回避のためのポイントを解説

スキルミスマッチと評価の主観性

従業員は採用のプロフェッショナルではありません。「自分の友人は優秀だ」という主観的なバイアスがかかりやすく、企業が求めるスキルセットと乖離が生じることがあります。

客観的なスキル評価を怠り、信頼関係だけで採用を決定すると、現場での業務遂行に支障をきたします。「エンジニアのスキルを確認せずに採用した結果、2ヶ月で離職になってしまった」そんな事例もあります。

採用基準を緩めることは、リファラル採用において絶対にやってはいけないことです。

社内の不公平感と士気の低下

リファラル経由で入社した社員を過度に優遇することは、既存社員の反発を招きます。市場価値に合わせるために紹介した従業員よりも高い給与を設定し、説明を怠ると不平不満につながるリスクです。

「自分は長年貢献してきたのに、なぜ新入りの方が高待遇なのか」という不満は、組織全体のモチベーションを下げます。公平な報酬制度と、透明性の高い評価プロセスが不可欠です。

法律違反となる職業安定法のリスク

リファラル採用の報酬設定には、法的リスクが伴います。

職業安定法第40条では、原則として労働者の募集に関する報酬の供与を禁止しています。そこで一般的に行われるのが、報酬を賃金や給与として支払う方法です。

ただし、報酬額が社会通念上高額すぎる場合や、就業規則に明記されていない場合は、違法とみなされる可能性があります。

社外の個人(元社員や業務委託先)に報酬を支払う行為は、無許可の職業紹介事業と判断されるリスクが極めて高いため、避けたほうがいいでしょう。

以下は、リファラル採用において従業員に支払う報酬(インセンティブ・報奨金)が、法的に適切に運用されているかを確認するためのチェック表です。

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関連記事:リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場|決め方や報奨金以外の事例も紹介

制度の形骸化と心理的負担

「誰かいい人いない?」という漠然とした依頼は、従業員にとってノイズでしかありません。ターゲットが不明確なまま告知を繰り返すと、従業員は次第に協力をやめてしまいます。また、ノルマのように紹介を強要すると、従業員の心理的負担が増大し、リファラル採用自体へのイメージが悪化します。「社内広報ができていない」ことは、リファラル採用の課題としてよく挙がるポイントです 。

リファラル採用の具体的失敗事例から学ぶ教訓

具体的な失敗事例から学ぶことは、健全な運用体制を築くための近道です。

よくあるトラブルのケーススタディを紹介します。

紹介者への配慮が評価の公正性を損ねた事例

ある中小企業では、部長が強く推薦した候補者を採用しました。入社後、勤務態度や成果に問題が見られたものの、人事や上司は「紹介者の顔を立てたい」という心理から厳しいフィードバックを避け続けました。

問題は半年以上放置され、周囲の社員は「紹介で入った人は評価が甘い」という認識を持つようになり、組織全体の評価制度への信頼が低下しました。最終的にその社員は配置転換を繰り返した末に退職しましたが、残った社員のエンゲージメント低下という長期的な損失が残りました。

カルチャーフィットを軽視しチーム崩壊を招いたスタートアップの事例

あるスタートアップ企業では、急成長に伴いエンジニアを緊急採用する必要があり、CTOが以前の同僚をリファラルで採用しました。技術力は十分と判断され、面接では主にスキル面のみを確認し、価値観や働き方についてのすり合わせをほとんど行いませんでした。

入社後、その社員は成果主義を強く主張し、既存チームが重視していた相互レビューやナレッジ共有を軽視する姿勢を見せました。結果としてチーム内の対立が激化し、周囲のエンジニア2名が退職。採用した1名のために、より大きな組織的損失が生じました。

紹介プロセスの不透明さが社内の紹介意欲を低下させた事例

あるITサービス企業では、リファラル採用を推進する制度を設けたものの、選考基準や進捗が紹介者に共有されない状態が続いていました。

複数の社員が知人を紹介しましたが、選考がどの段階で止まっているのか分からず、結果連絡も数か月後というケースが発生。紹介した社員は候補者から状況を問われても答えられず、信頼関係を損ないました。

結果として社内では「紹介しても無駄」「知人に迷惑をかけるだけ」という認識が広がり、制度自体が形骸化しました。

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法律面から見たリファラル採用の適正な運用方法

リファラル採用を運用する上で、法律の遵守は絶対条件です。特に報酬(インセンティブ)と個人情報の扱いに注意が必要です。

職業安定法での報酬(インセンティブ)

職業安定法は、手数料を目的とした不当な職業紹介から労働者を守るための法律です。原則として、従業員に対して紹介の報酬を支払うことは禁止されています。ただし、以下の条件を満たす場合に限り、報酬の支払いは適法とみなされます。

  • 報酬を賃金や給与として支払う。
  • 就業規則や賃金規定に支給基準を明記する。
  • 報酬額が極端に高額ではない。 一般的には、人材紹介会社へ支払う手数料を下回る設定が推奨されます。

報酬(インセンティブ)の相場と設計のコツ

リファラル採用の報酬額は、雇用形態によって異なります。正社員の場合は5~20万円程度、非正規雇用の場合は5,000~10,000円程度が一般的です。

「高額な金銭報酬を出せばリファラル採用は伸びるのではないか」という質問もよく聞かれますが、そんなことはありません。それよりも、紹介への感謝を伝えるメッセージ性を重視することが成功の鍵です。

金銭以外にも、役員とのランチやギフト券の提供、社内表彰などの非金銭的報酬も高い効果を発揮します。

関連記事:リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場|決め方や報奨金以外の事例も紹介

2025年・2026年の法改正が採用に与える影響

2026年には、人事労務の分野で大きな転換点が訪れます。2026年7月からは、障害者法定雇用率が2.7%へ引き上げられる予定です。多様な人材の確保が急務となり、リファラル採用を通じた潜在層へのアプローチが重要性を増します。連続勤務の制限や勤務間インターバル制度の導入など、労働基準法の改正も検討されています。

過酷な労働環境にある企業は、リファラル採用において従業員から紹介を得ることが難しくなります。法令を遵守し、従業員が自信を持って知人を誘える環境作りが、採用成功の基盤となります。

リファラル採用成功への7つのステップ

リファラル採用を「やばい」失敗に終わらせず、強力な採用チャネルにするための戦略を提示します。

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ステップ1:導入目的の言語化と経営陣の意思表明

「採用コストを下げたい」という理由だけでは、従業員の協力は得られません。「自分たちの手で最高のチームを作ろう」といった、前向きなメッセージを経営陣が発信し続けることが重要です。経営層がリファラル採用の意義を語ることで、組織全体の優先順位が高まります。

ステップ2:具体的なターゲット(人物像)の共有

「誰かいい人」という表現は避けてください。「30代のJavaエンジニアで、週末はアウトドアを楽しむような活動的な人」など、具体的な像を提示します。ターゲットが具体的であればあるほど、従業員は自分の知人を思い浮かべやすくなります。

ステップ3:紹介フローを極限まで簡素化する

紹介の手間が複雑だと、協力率は著しく低下します。「URLをLINEで送るだけ」「履歴書不要で面談が可能」といった、心理的・事務的ハードルを下げることが必要です。専用ツールを活用することで、スマートフォンから簡単に紹介できる環境を整えることができます。

改善項目従来のアナログ運用ツール活用による改善後
紹介の連絡方法担当者へ直接メールURLをクリックして送信
提出書類履歴書・職務経歴書が必須SNS経由の面談予約のみ
進捗の確認担当者へ都度問い合わせ管理画面でリアルタイム共有

ステップ4:選考前にカジュアル面談を実施する

いきなり正式な選考へ進むと、不採用となった際の気まずさが最大化します。まずは合否に関係のないカジュアル面談を入口に設定してください。候補者のキャリアの悩みを聞き、自社が最適でなければ他社を勧めるような、候補者に寄り添った姿勢が信頼を生みます。

ステップ5:不採用時のフォローアップ

不採用は避けられませんが、その後の対応がリファラル文化の成否を分けます。紹介した従業員に対しては、必ず不採用の理由を説明し、協力への感謝を伝えてください。「ごめんねごはん制度」のように、不採用後も紹介した従業員と候補者が会食できるよう費用を補助する仕組みも有効です。

ステップ6:協力した行動自体を称賛する文化を作る

採用決定時だけでなく、知人に声をかけたという行動そのものを称賛してください。全社会議や表彰制度を通じて、リファラル採用に関わったメンバーをヒーローとして紹介します。協力することが誇らしいと思える文化を作ることが、制度の定着には不可欠です。

ステップ7:データを可視化し定期的に改善する

認知率、協力率、決定率などのKPIを可視化し、ボトルネックを特定してください。「特定の部署だけ協力が得られない」「応募は多いが面接通過率が低い」といった課題に対して、個別に対策を打ちます。 リファラル採用は一度始めて終わりではなく、常にアップデートし続ける必要があります。

2026年以降の採用戦略におけるリファラル採用の役割

AIの普及や労働人口の減少により、採用市場はさらに激化します。激動の環境下で、リファラル採用の重要性はますます高まっていきます。

AI時代こそ問われる人間関係の価値

デジタル技術が進化するほど、信頼できる知人からの情報は価値を持ちます。AIによるスカウトメールが溢れる中で、友人からの「一度話してみない?」という声掛けは、候補者の心を動かす最大の武器になります。リファラル採用は、単なる採用手法ではなく、企業のファンを増やすマーケティング活動そのものです。

候補者体験の向上と定着率の相関

リファラル採用は、候補者にとっても「自分をよく知る人が勧める会社」という安心感を与えます。入社前に職場のリアルな情報を得られるため、入社後のギャップが少なくなります。高い定着率は、企業ブランドを強固にし、さらに優秀な人材を引き寄せる好循環を生み出します。

採用手法1年後の定着率(推計)採用単価(目安)
リファラル採用非常に高い(90%以上)低い(報酬金+運営費)
人材紹介会社標準的高い(理論年収の35%前後)
求人広告サイト標準~やや低い中程度(掲載費)
ダイレクト採用高い低い(ツール利用料)

リファラル採用を成功させるための組織作り

リファラル採用を成功させるためには、従業員が「この会社を誰かに紹介したい」と思える状態が前提となります。

魅力的な人事制度や、柔軟な働き方の導入は、リファラル採用の強力な後押しになります。例えば、シエスタ(昼寝)制度や、休暇費用の補助など、ユニークな取り組みは従業員のエンゲージメントを高めます。

自社の魅力を磨き続けることが、結果として最強のリファラル採用を実現する近道です。

関連記事:人事制度の事例11社|評価制度やユニークな取り組みで早期離職を防止

まとめ

リファラル採用が「やばい」と言われる現象は、その影響力の大きさと、運用の繊細さを物語っています。人間関係、スキル評価、法律、そして企業文化。これら全てに配慮し、誠実に運用することで、リファラル採用は最強の武器となります。

やばいという不安を恐れるのではなく、正しい知識と仕組みを持って、従業員と共に素晴らしい組織を作ってください。

「リファラル採用を導入したいが何から始めたらいいか分からない」「制度の形骸化を何とかしたい」とお悩みの方は、こちらもご活用ください。最新の成功事例や運用のコツがまとまった資料です。

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監修者

清水 巧株式会社ウィルオブ・パートナー代表取締役社長

SansanでのCS組織立ち上げを経て、2014年に株式会社リフカム(現:株式会社ウィルオブ・パートナー)を設立。リファラル採用支援サービス「Refcome」を通じて数多くの企業の制度設計・風土改革を支援。現場を巻き込むノウハウに精通する。2018年Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人」選出。2024年よりウィルオブグループにて企業の採用力強化をリードする。

SansanでのCS組織立ち上げを経て、2014年に株式会社リフカム(現:株式会社ウィルオブ・パートナー)を設立。リファラル採用支援サービス「Refcome」を通じて数多くの企業の制度設計・風土改革を支援。現場を巻き込むノウハウに精通する。2018年Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人」選出。2024年よりウィルオブグループにて企業の採用力強化をリードする。