当インタビューは、「社員にとって紹介したい会社作り」「本質的な採用における取り組み」を積極的に行う企業様を表彰対象とした「Referral Recruiting AWARD 2023」の受賞企業様へ、その取り組みをお聞きするシリーズです。
オムロン株式会社は、オートメーションのリーディングカンパニーとして、制御機器、電子部品、社会システム、ヘルスケアと多岐にわたる事業を展開し、世界130か国以上で商品・サービスを提供しています。
今回、オムロン株式会社は「多くのステークホルダーを巻き込みながら施策の検証・改善を通じてリファラル採用の推進に取り組んだ企業」としてエンタープライズ賞を受賞しました。
- リファラル採用を始めたきっかけ
- 課題や注意していること
- 今後の展望
などを中心に、具体的な仕組み作りについてお話をお伺いしました。
リファラル採用の可能性を地道に伝えた
― まずは、リファラル採用を始めたきっかけをお聞かせください。
新村様: 当社のキャリア採用においては、エージェントへの依存が非常に高い状態でした。エージェント経由の採用は、スピーディーで費用対効果も良いというメリットがありますが、市場の動向を見ると、この依存状態を続けると将来的に採用が困難になると感じていました。そこで、広義のダイレクトリクルーティングを強化する必要があると考え、顕在層だけでなく潜在層にも直接アプローチできるリファラル採用の制度導入に着手しました。
― これまでの施策で特に良かったものは何ですか?
手嶌様: 一番大きかったのは、1年間毎月続けたサイネージ展開と説明会の実施です。説明会の参加人数は月によってまちまちでしたが、この継続が大切だったと思います。実際、毎月新しいRefcomeユーザーが増え、リファラルに関する問い合わせも週に1回程度入るようになりました。制度利用者にきっかけを確認した際に、「サイネージの告知を見て」と聞いた時は、確かな影響力を感じました。
説明会に関しては、希望者へリファラルカードの配布も実施しました。SNSで簡単に紹介はできるものの、コロナ禍が落ち着き対面の場が増えたことで、手渡しで使用できるリファラルカードを欲しいと言ってもらえることが多かったです。また、地方の事業所にポスターを掲示したり、事業所内のカフェなど人が集まる場所にQRコードPOPやリファラルカードを設置するなど、事業所と連携した施策も行いました。
積極的に紹介してくれる人へのフォローアップや再ヒアリングを行うなど、さらなる掘り起こしの取り組みも実施しました。
キャリア入社の方々には必ず、入社時の資料に合わせてリファラル関連の資料を渡しています。入社初日に「Refcomeアプリをダウンロードして、紹介をお願いします」と伝えることで、全員に漏れなくその意識を持ってもらっています。
― 特に力を入れた点について教えてください。
手嶌様: 事業部とのミーティングを毎月行っており、リファラル経由で採用が決まった人のポジションを積極的に共有していました。
面接の際には、面接官への事前連絡で「今回の候補者はリファラル経由です」と伝えるようにしています。これは、他部署からの紹介もあるので、その情報を共有することで面接官に適切な対応をしてもらうためです。
発信や共有の目的は、リファラル採用が可能性と期待がある施策だということを分かってもらうことです。リファラル経由で採用された人財のユニークな背景や、他部署からの意外な紹介などを地道に社内に伝え、広める努力をしてきました。これは特に意識して取り組んでいました。
今ある風土を大事にしつつ、柔軟に新しい制度や仕組みを取り入れられれば
― 施策を進める中で課題や注意している点はありますか?
手嶌様: 他部署との調整や相互理解を深めることでバランスを取るのが一番の課題でした。私たちが進めたい施策も、事業部ごとに採用の優先順位が異なるため、それぞれの視点や立場の違いを理解し合うことが必要です。
事業部のメンバーが自発的に「この人はどうですか?」と提案してくれる活発なコミュニケーションは非常に重要で、そのような場を大切にしています。実際の成果を出して、その事例を共有することで他の部署の理解を深めることを心がけています。他の事業部をどう巻き込むかは、今後も取り組むべき課題だと感じています。
小中様: 事業部による風土の違いの大きさを感じています。各事業部にはそれぞれの色があり、採用に対する取り組み方や考え方がすでに根付いているため、そこに新しい風を取り入れるのは難しいと思います。ただ、既存の風土が悪いわけではなく、それぞれに良さがあると考えています。
私の考えとしては、全てを一から変える必要はなく、むしろ既存の良い部分を残しつつ、新しい制度や仕組みを柔軟に取り入れていく「合わせ技」が望ましいです。これにより、採用現場がより活性化することを期待しています。
新村様: 確かに、事業部ごとの温度差はどうしてもありますよね。なので、現状の風土を一新する必要は必ずしもないと考えています。ただ、変化が必要と感じた場合、二つのアプローチが考えられると思っています。
一つは、風土そのものに直接アプローチして変えていく方法です。これはかなりの努力が必要です。もう一つは、具体的な事例を積み重ねることで、結果的に風土を変化させていくことです。例えば、リファラル採用で成果が出た時に、「こういう新しいこともチャレンジしてみたら意外と成果出るんだな、では今度こんなことにも挑戦してみようか」といったように新しい試みへのきっかけとなり、結果的に風土が変わっていく可能性があります。
目指すは、小さな成功から始めて徐々に広げ、最終的には新しい取り組みが当たり前になるような変化です。そのためには、まず進んでいる部分から始めて、少しずつ影響を広げていくことが重要だと思っています。
― 施策の成果や、施策前後での変化について教えてください。
手嶌様: このリファラル採用の導線が確立されたこと自体が、大きな成果だと考えています。以前は、社員が誰かを紹介したいと思っても、そのプロセスや連絡方法が不明確で、結果として人事に直接相談するケースが多かったです。そのため、応募の手続きや管理の面でかなり手間がかかっており、機会損失があったのも事実です。
しかし、今は「社員紹介はこの方法でできます」という手順が明確になり、みんながその方法を理解して共通の認識を持てるようになったことが、一番の変化であり成果だと思います。
人が活躍して初めてバリューが生まれる
― では最後に、今後の展望や取り組みたい課題について教えてください。
小中様: 採用手法としてリファラルを活用することは引き続き重要ですが、それ以上に、社員が自社に人を紹介したいと自然に思えるような企業風土の醸成が必要だと感じています。これまでお話した我々の取り組みが、より良い企業文化の形成に貢献できればと考えています。そのために、採用が押し付けにならないような工夫を凝らした施策を今後展開していきたいです。
手嶌様: 施策の面では、ログイン不要のポータルページ機能を展開していくことで、新しいRefcomeユーザーの獲得を増やしていくことを考えています。また、既に紹介してくれた方々へのフォローアップが不足していたと感じているため、これらの方々に定期的に連絡を取り、コミュニケーションを図っていきたいと思います。
新村様 : 将来的に、潜在層とダイレクトに繋がる独自のチャネルがなければ、人財を獲得することが難しくなるという危機感を非常に強く持っています。正確な割合を予測することは難しいですが、この比率を上げていかなければ、今後採用で苦戦すると感じています。中期的には間違いなく、ここに力を入れる必要があります。
また、採用を担う部門としては、単に採用するだけでなく、その人が実際に活躍して初めて真のバリューが生まれるという考えを持っています。その観点で見たときに、リファラルで採用された人財は、活躍度や会社へのフィット感が高いという仮説を持っていますが、まだこれを証明する段階にあります。
この仮説が証明できれば、活躍の可能性がより高い人財の採用によって会社と人、お互いがWin-Winになれる、そういうご縁づくりを進めていき、さらに、事業にとってもより成果が出せる状態に繋げられます。そこが採用の重要な役割だと思っています。