全社一斉では動かない。管理職から始めて約400名へ広げた、エーピーコミュニケーションズのリファラル採用

株式会社エーピーコミュニケーションズでは、以前から課題となっていた人材紹介会社に依存した採用活動からの脱却を目指し、既存の社員紹介制度を活性化しました。
部署ごとに異なるカルチャーや、「社員紹介=引き抜き」という業界特有の価値観を踏まえ、管理職向けワークショップから段階的に展開。Refcomeのカスタマーサクセスと運用を検討しながら、第2回実施時にはタレントプールが50名に到達しました。その後も新規入社者向けのオンボーディングにもワークショップを盛り込み、累計約400名以上の社員へ取り組みを伝えています。
今回は、取り組みを主導した採用責任者の小山氏に、社内浸透のプロセスや継続のポイントを伺いました。
| 業種 | IT・情報通信 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都千代田区 |
| 従業員数 | 516名(2025年12月時点) |
| 採用職種 | ネットワークエンジニア、セキュリティエンジニア、クラウドエンジニアなど |
「制度はあるけれど、活用されていない」。エージェント依存からの脱却へ
―― まず、小山様のご経歴と、エーピーコミュニケーションズ様の採用について教えてください。
小山氏:2023年11月にエーピーコミュニケーションズへ入社し、2024年から採用責任者を務めています。現在はTalent Acceleration部の部長として、全社の採用戦略を担っています。これまでデザインファームのグッドパッチなど、IT業界を中心に複数社で15年以上採用に携わってきました。
当社はITインフラ分野を中心に事業を展開しており、ネットワークエンジニア、セキュリティエンジニア、クラウドエンジニアなどを採用しています。特にネットワーク領域に強みを持っていますが、セキュリティやクラウド領域もAIの台頭により市場自体が成長しており、採用ニーズが高まっています。
こうした領域はいずれも今後さらに人材需要が拡大すると考えているため、採用体制そのものを強化していきたいと考えているところです。
―― Refcome導入当時、採用にはどのような課題があったのでしょうか。
小山氏:当時は採用チームのメンバーの入れ替わりで体制が不安定だったことなどもあり、人材紹介会社を中心とした採用になっていました。いわば受け身の採用になっており、経営からも採用の課題として共有を受けていました。その状況を変えていく一手として、社員紹介を強化することにしたのです。
実は社員紹介制度自体はあったのですが、十分に認知されていなかったり、採用側もうまく運用できていないなど、運用面に課題があることは明らかでした。当時の状況では、社員紹介の改善をプロジェクト化し、関係者を巻き込みながら進めるにはリソースが足りていなかったため、前職でも利用していたRefcomeさんに相談しました。
―― 数あるサービスの中で、Refcomeを選ばれた理由を教えてください。
小山氏:やはり、前職で利用した経験があったことは大きいですね。
それに加えて、私は新しいサービスを導入するとき、サービスそのもののクオリティーだけではなく「一緒にやる人」もかなり重視しています。もちろん機能が優れていることなども重要ですが、一緒に取り組む人との熱量や価値観が合わなければ、サービスをうまく活用できません。
その点、これまでのお付き合いもあり、進めやすさが分かっていたこともRefcomeを選んだ理由の一つです。
全社一斉では進まない。「小さな成功」から始めた理由
―― 導入後は、まず当時の採用部門でワークショップを行い、その後、事業部の管理職へと対象を広げていきました。全社一斉ではなく段階的に進めたのはなぜでしょうか。
小山氏:当社には大きく3つの事業部がありますが、事業部毎にメンバーの専門性が異なることもあり、それぞれ少しカラーが違います。そのような背景もあり、ベースの部分は共通していても部署によって考え方などが違うので、いきなりの全体最適は難しいと考えました。
そこで「部分最適」で進めることにしました。まず小さなステップから始めて、小さな成功を作る。それをベースに少しずつ広げていこう、と。
実際にどの組織からどのような形で広げていくかは、Refcomeさんとも相談しながら進めました。ワークショップ実施後には振り返りを行い、資料も修正しながら次の展開につなげていきました。
たとえば、いきなりメンバー向けにワークショップを実施するのではなく、最初に管理職の方々に体験してもらいました。管理職自身が納得していない状態でメンバーへ展開しても、「これは何のためにやるんですか?」と聞かれたときに上司は答えられません。それではなかなか浸透しないですよね。
また、採用側の正論だけで変えようとしないことも意識しました。「なぜやってくれないのか」の理由や要因を探る。そうすると、これまで進んでいなかった背景などが見えてきます。
もともとのカルチャーを尊重しながら、変えるべきところを少しずつ変えていく。そのために、プロセスを細かく分けて進めたのです。
―― 取り組みを進めるうえでは、ITインフラ業界ならではの難しさもあったそうですね。
小山氏:ありましたね。IT業界の中でも、ネットワークなどのITインフラ領域は歴史が長い業界です。一つの会社で長く働いてきた方も多く、「社員紹介は引き抜きではないか」「前の会社への裏切りになるのではないか」というネガティブな感覚を持っている方もいました。
そこで、何が「引き抜き」にあたるのかを具体的に整理して説明しました。やみくもに声をかける、以前の会社の悪口を言って転職を促す、何人もまとめて連れてくる―― そうした具体的なNG例を示しながら、「社員紹介=引き抜き」ではないことを伝えていきました。
単に「社員紹介をやりましょう」と言うのではなく、そうした価値観の部分から少しずつ誤解を解いていくことも丁寧にやっていました。

採用部門から各事業部へ。ワークショップを起点に約400名へ展開
―― 実際に社員へ浸透させていく中で、特に工夫されたことを教えてください。
小山氏:一つ大きかったのは、新しく入社した方へのオンボーディングです。もともとオンボーディングの中に社員紹介制度の説明はありましたが、制度を説明するだけでした。それをワークショップ形式に変えたんです。
社員紹介は入社して間もない方ほど効果的だと考えていたこともあり、オンボーディングに組み込みました。そうすることで、社員紹介について考えてもらう機会を必ず作れるようにしました。
そのほかにも、キャラバンのような形で少人数ずつ説明する機会を設け、結果的に既存社員の8割近い400人近くへ伝えていく活動もしました。
2回目のワークショップでタレントプール50名。社員紹介を「仕組み」に乗せる
―― ワークショップを重ねる中で、第2回実施時点ではRefcomeに登録されたタレントプールが50名に到達しました。取り組みを一時的なイベントで終わらせないために、どんなことを意識しましたか。
小山氏:やはり、普段必ず実施している既存フローに乗せることですね。オンボーディングに組み込んだのもその一つです。一度大きく盛り上げてもいずれは忘れられてしまうので、ルーティンとして普段の業務の中に組み込むことが大切だと思っています。
一方で、仕組みに入れればそれですべて解決するわけでもありません。運用開始から3年目に入っていますが、「実施すること自体が目的になってしまっている」という課題も出てきました。制度の説明もワークショップも事務的に行うだけでは、魅力も熱量も伝わりません。
採用ではロジックも大切ですが、熱量はそれ以上に大切だと思っています。自分の思いや会社の魅力を、自分の言葉で伝えられるか。運用に慣れてくるとこの点が失われていくことが多く、この辺りは今後も課題になっていくと思います。

社員との接点から入社へ。1年目に社内表彰を受賞したエンジニア
―― 実際に社員紹介をきっかけに採用につながった中で、印象に残っている方やエピソードはありますか。
小山氏:一番印象に残っているのは、2025年に入社をされたネットワークエンジニアの方ですね。それまで転職経験がなく、将来の歩み方に悩みながらも「自分は転職市場で通用するのだろうか」と不安を感じていた方でした。実はネットワークエンジニアは、その他のエンジニアと比較するとロールモデルが少なく、キャリアに悩む方も少なくないということが採用に関わる中で感じていました。
そこで、カジュアル面談では「転職するかどうかは後で判断すればいいと思うので、まずは自分にどんな可能性があるのかを知るところから始めてみては?」とお話ししました。
それがその方のキャリアを考えるきっかけとなり、結果として当社へ入社となりました。入社早々からご活躍され、1年目で社内表彰も受賞されました。決断をするまでには色々葛藤があったのではないかと思いますが、そうやって環境を変えて活躍されているのは、本当に素晴らしいことだと思いますし、とても印象に残っているケースでしたね。
「普通にある施策」になった、次は継続的に動く仕組みへ
―― Refcomeを導入して取り組みを続ける中で、社内にはどのような変化がありましたか。
小山氏:一番良かったのは、「当社には社員紹介制度がある」ということを、新しく入った社員へ伝え続けられる仕組みができたことです。以前は事務的な制度説明でしたが、そこからきちんと目的を持った芯のある制度説明になったと思います。オンボーディングの中でも、大事なプログラムの一つです。
一方で、退職や異動などの担当体制の変化などによって一時的に運用が止まってしまった時期もあり、現在はあまり良い状態ではありません。
そのため現在は再度改善プロジェクトを立ち上げ、メンバー1名とともにもう一度リファラル採用の活性化を進めています。現在は、Refcomeさんとともに社員情報や運用ルールを見直し、既存のタレントプールの棚卸しを進めています。その他、9月に全社向けに社員紹介の認知度のアンケートを取得しており、今後はアンケート結果も踏まえながら、社内広報やアプローチ施策を改めて検討していく予定です。

